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<第2回>平積み本、大解剖! 『老いてこそ人生』(2ページ目)

ベストセラーの定番の地位を確立した感のある、「老い方指南書」。「老い」とは遠いイメージ著者が説く「老い方の極意」とは?

執筆者:梅村 千恵

■老いをみつめ、老いを受け止め、老いと抗う。「老い」を「過ぎゆく時間」に置き換えてみれば・・・

彼は、まず、「老い」をいたずらに美化しない。
「老いていくこと」すなわち衰えていく肉体を自覚することは「いまいましい」と言い切る。
「いまいましい」――きわめて、彼らしい口吻であり、同時に肉体の衰えを自覚しはじめた(著者いわくこの感覚は、女性より男性の方が顕著らしいが)人のなんとも形容のしがたい苛立ちをぴったりと言い当てているではないか。
そして、このいまいましさに立ち向かうことを、けっして徒労だと卑しめない。彼自身、ランニングを己に課し、ヨットレースで無茶をして、ゴルフで飛距離自慢をするかと思えば、長年の持病である腰痛から逃れるために「名医」の情報をこまめに収集し、訪ね歩く。
有体に言えば「年寄りの冷や水」的な行為も含めて、肉体へのこだわりを捨てないのだ。
年をとれば、肉体は衰えるが、精神の充実がそれを補完して余りある、といった空疎な精神論に逃げないところが、彼の真骨頂であろう。
だが、それと同時に、彼は、肉体の衰えというきわめて肉体の衰退を内面の衰退と重ねたヘミングウェイや、死への恐れから自意識の檻へと逃げ込んだ三島由紀夫など、「ヒーローの自死」は賛美しない(深い愛惜を伴って、だが)。著者にとって、彼らは「老い」や「死」を受け止めえなかった者たちなのだ。

肉体の衰えというネガティブな実感を伴った「老い」そして、その末に必ずある「死」。それを認め、受け止める、そのよすがとして、彼は、法華経の教えを示す。

「色即是空、空即是色」=いかなるものごとも変化している――

一般的に無常観をこの一言こそ、著者にとって、アグレッシブに「老い」をいき切るための「勇気」を示したものなのだ。

このページを読んでいただいた方の多くは、おそらく「老・前・前」の方だろう。しかし、本書に引用されているシャンソン『人生は過ぎゆく』のフレイズ
――人生は過ぎゆく 恋もすぎゆく
ラ・ヴィ・サン・ヴァ
ラ・ヴィ・サン・ヴァ
(中略)
どうしよう 去りゆく 助けて!――

最後の「助けて!」のところに、
もし、少しでもドキっとしたなら、タイトルにちょっと抵抗はあるだろうが、手にとっていただいても損はないと思う。

★あえて、アラ、捜します!
タイトル、これじゃなくちゃダメですか?それは、さておき、「性」に触れられていなかったことがちょっと不満。次作ですか?

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