落語/落語関連情報

うなぎと落語(2ページ目)

もうすぐ、土用の丑の日。うなぎは江戸時代から庶民の憧れで大好物だったようで、落語のほうにも多数登場します。今回は、その「うなぎ」を題材とした落語を紹介いたします。

執筆者:清水 篤司

鰻の幇間(たいこ)

落語名人選 鰻の幇間/干物箱:桂文楽(八代目) 幇間が登場する落語は
うなぎが登場する落語で最も有名な演目がこれでしょう。短く分かりやすい噺なので季節を問わず寄席や落語会で聴くことができます。

幇間は太鼓持ち(たいこもち)や男芸者などとも呼ばれ、宴席やお座敷などの酒席において主賓や客の機嫌を取りながら芸者を助けて場の雰囲気を盛り上げ、その宴席の客や店からのご祝儀(チップみたいなもの)で生計を立てていました。現代でいうと宴会部長が職業といったところでしょう

主人公は野幇間(のだいこ)の一八(落語の幇間の名前はたいてい一八)。野幇間とは特定の旦那を持たずに、お金を持ってそうな旦那衆に手当たり次第に近づき「よいしょ」しまくりご祝儀を頂く、いわばフリーの幇間のことです。

内容はご祝儀に預かろうと路上でお金持ちそうな旦那をみつけ、あることないこと言って擦り寄り、うなぎをごちそうしてもらうことになるのですが、この旦那であろう人物というのが一枚上手で一八が二階で飲んだり食ったりしてうるちに自分は帰ってしまいます。結局、うなぎ屋で飲み食いした代金だけでなく、その旦那と思っていた人物のお土産代まで支払い、自分の下駄まで盗まれてしまうという間抜けな幇間のお噺です。

残念なことに、この噺に登場するうなぎ屋は薄汚く、肝心のうなぎも美味くないようで(噺の中で一八が不味さを表現)、美味しいうなぎは登場しません。

後生(ごしょう)鰻

古今亭志ん生 名演大全集 1 火焔太鼓/黄金餅/後生うなぎ/どどいつ、小唄/
志ん生の十八番である「火焔太鼓」「黄金餅」も収録されたお得なオススメの一枚。
この噺も出てくる店の主人がうなぎ屋というだけで、特にうなぎが食べたくなるような描写は一切ありません。

内容はネタばれするとちっとも面白くない落語なので明記しませんが、めちゃくちゃブラックで、ちょっとドキッとするようなサゲ(落ち)があります。

この落語は名人上手と呼ばれる数多くの噺家のCD音源があります。その中でも一押しなのが古今亭志ん生のものです。志ん生独特の語り口によってかなりブラックなサゲもさっぱり聞けます。


うなぎを食べたくならない、うなぎ落語?

他にも「素人鰻」(八代目・桂文楽がオススメ)や「うなぎ屋」(五代目・柳家小さんがオススメ)などがありますが、どの演目も他の食べ物を扱った演目(時そば、風邪うどん、まんじゅうこわいなど)とは違いうなぎを美味しそうに食べるシーンがありません。

それゆえ、どの噺を聞いても特にうなぎが食べたくなくるような心持ちにはあまりなりません。これが演目の題名にうなぎがついている落語の特徴といえるでしょう。

とはいってもうなぎが数多くの落語の演目に登場してくるところをみれば、江戸時代からうなぎは庶民の憧れで大好物だったことにはかわりません。そんなところがうなぎが現代でも日本食を代表する食べ物であるゆえんかもしれませんね。
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