「真打」とは落語界の身分の一つ

落語の真打とは

噺家になると、一生もち続けることになる扇子。実用としてだけでなく、落語を演じる上で重要な小道具の一つとなります

落語界だけでなく日本の古典的な団体において、その団体を統率するために封建的な身分制度があります。武道の道においては初伝・中伝・免許皆伝の目録。わかりやすい例として、大相撲の序列である、序の口・序二段・三段目・幕下・十両・幕内・小結・関脇・横綱が挙げられます。

落語界にもこれらと似たような序列があり、それが「真打制度」です。この制度は他の団体と同じく、その団体内での序列を表すもので、「真打」になるとプロの噺家になれるというような公的な免許ではありません。真打制度とは落語界のみで通用する封建的身分制度の事と理解してもらえればよいでしょう。

真打制度には3つの身分があります。しかし、これは江戸落語界(東京)のみの制度です。大阪を中心とした上方落語界においては、この真打制度のような明確な身分制度がありません。
   

前座→二ツ目→真打と3段階ある「真打制度」

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手ぬぐいを高座でさりげなく使えるようになれば二つ目も近い
■前座
入門を希望した師匠に入門を許されると、まずは師匠の身の回りの世話し落語界のしきたりを覚えます。この見習い期間が終わると、師匠から前座名をもらい、各種落語団体で承認を受け前座となります。

前座の仕事は一言で言えば下働きです。それ以外はすべて勉強で、当然収入なんてものはほとんどありません。

それで食っていけるの? と思われるでしょうが、食事は師匠の家で食べさせてもらうので食費はほとんどかかりませんし、寄席や落語会などで雑用をこなすと、小遣いや多少の給金がもらえますので、とりあえず住む所さえ確保していればなんとか生活していけるようです(一日中駈けずり回っているのでお金を使う時間もないし)。

昔は入門した師匠の家に住み込み、師匠の身の回りの世話や家事手伝いをしながら前座修行をしていたようですが、現在ではほとんどが、師匠の家に通い仕事をする「通い弟子」です。

前座の仕事は多種多彩です。基本的には一日中、自分の師匠につき、師匠の世話をいっさいがっさいします。

寄席や落語会などでは自分の師匠の世話だけでなく、様々な仕事があります。たとえば、楽屋でのお茶入れ、ネタ帳への記載、自分の師匠の着替えだけでなく、他の師匠の着物の着替えやたたみの手伝い、会の進行の確認など、落語における一切の雑用は基本的にすべて前座がやります。この修行によって落語界だけでなく大人社会のマナーやルールを叩き込まれます。

そして、ルールやマナーだけでなく芸の肥やしとするために踊りや太鼓や笛など様々な日本の古典芸能を学びはじめたりもします。前座の期間は人によりますが、だいたい4,5年です。

■二つ目
前座修行を終え、二つ目になると噺家として人前で紋付の羽織を着て落語をすることを許されるようになります。同時に前座でおこなっていた雑用から解放されます。噺家の多くが、この二つ目になるときが一番うれしいといいます。

寄席や落語会で口演するとわずかながらも給金がもらえるようになります。しかし、仕事はほとんど無く、噺家として一番苦しい時期かもしれません。前座の頃と違い、落語のネタを習うとき以外は、特に師匠の所へ行かなくてよいので、毎度食事にありつけることもなくなります。

また、寄席での雑用からも解放されますが、雑用仕事による給金もなくなり、他の師匠からもお年玉や小遣いももらえなくなります。自分一人で暮らしていかなければならないので、経済的に困難を極めます。

しかし、その困難を乗り越え、きっちり落語の腕を磨き、多くのご贔屓さんを得ることが真打への道につながります。二つ目の期間はだいたい10年くらいです。人気・実力が抜きん出ていると抜擢され5年くらいで真打なる噺家さんもいるようです。
 

真打とは、寄席の明かりであるロウソクの芯を打つ人 

昔の寄席では、このロウソクの火を消すことが終演の合図でした

昔の寄席では、このロウソクの火を消すことが終演の合図でした

真打の語源は「真を打つ」からきていると言われています。なんの真を打つことなのでしょうか?

昔、夜の寄席での高座の明かりはすべてロウソクでした。寄席で最後の演者が落語を終える時に、明かりのロウソクの火を消すためにロウソクの芯を切り落としていた様子から真打と伝えられています。

つまり、真打とは高座で主任(トリ)を勤めることができる実力のある噺家のことを指します。落語の修業の成果を自分の師匠だけでなく数多くの落語関係者に認められ、たくさんのご贔屓さんができた結果、真打となることが許されます。
 

噺家の最初の晴れ舞台「真打昇進披露」

真打になると、まずは噺家にとっての最初の晴れ舞台である真打披露興行がおこなわれます。しかし、真打披露興行や、寄席でトリを連日務めなければならないので、落語のネタも数多くもたなければならないし、名に恥じない落語の腕を客に見せなければなりません。

また、噺家にとって最初のおめでたいことゆえ、真打披露パーティーが開かれますが、盛大なパーティーを開いてもらうには数多くのご贔屓さんがいなければなりません。

つまり、真打とは落語の実力もさることながら、芸人としての人気もあると認められた噺家の称号なのです。
 

真打とは噺家としての本当のスタート

そして、東京に限ってですが、真打になると落語家の敬称である「師匠」と呼ばれるようになります。師匠となって初めて、人に落語の稽古をつけることができるようになり、弟子をとることができます。自分で落語を演ずるだけでなく、他人にも落語を教えることができるということは、周りからも一人前の噺家として認められることです。

このように、入門してから真打になるまでは、当人の才能や努力等もありますが10~15年という長い歳月がかかります。

落語界の中で真打は最高身分でありますが、真打になって初めて、世間一般に顔が売れ、一人前の噺家として認められるようになることを考えると、噺家にとって真打はゴールではなく、本当の意味でのスタートといえるでしょう。

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