立川談春:巧さだけなら、すでに名人級の狂気の噺家
文七元結 ・九州吹き戻し、紺屋高尾・明烏と相当腕に自信がなければCD録音に踏み切ることができない大ネタばかりをあえて選び発売するところがいかにも談春らしい。 |
この人はとにかく「巧い」、古典落語を演じる技術だけならたぶん日本一では(言いすぎかな)? 語り、仕草、すべてが一級品。この人の高座は良質な舞台や踊りのようで美しい。
そしてその巧さが、もの凄い鍛錬のすえに出来たものだというところをまったく見せない。すごく難しい演目をサラッと演じる。そこがニクイ。
彼の最大の魅力は流暢な高座の中で垣間見せる「狂気の目」です。高座での彼の「目」は怖い、堅気の目じゃない。本当に引き込まれそうでゾクッとします。「目でものを言う」という言葉があるならば彼はまさに「目で落語する」噺家です。
立川流は寄席(定席)に基本的には出演しないので、立川談春を見るにはもの凄く取りづらい独演会のチケットを入手するしかありません。都内の興行は手に入れることは至難の業ですが、地方公演はまだまだ手に入りやすい状況です。
談春はがんばってチケットを獲得するだけの価値のある高座を必ず見せてくれるので、チケット入手に奔走しましょう。
桂小米朝:上方落語界、唯一の正統後継者
張りのある若々しい語りが、すごく心地よい。上方落語界では珍しい、聴かせる噺家の一人です |
小米朝は米朝の実子とはいえ、今までは自由奔放に桂米朝という枠に囚われず活動してきたように思われます。
なぜなら、桂米朝には桂枝雀、桂吉朝という一門の正統をきちんと継いでくれる才能豊かな弟子がいたからだと思います。
しかし、残念ながら、この正統を引き継ぐ2大弟子とも米朝本人より先に他界してしまいました。他にも米朝には数多くの人気・実力のある弟子(ざこば、月亭可朝)は大勢いますが、米朝一門の正統性を引き継ぐタイプではありません。
彼は各地でオーケストラと競演し、オペラと上方落語の合体「オペらくご」という新しい取り組みをしたり、多数のテレビや舞台に出演したりと、幅広く活動しています。しかし、そろそろ本流に戻らなければならないのかもしれません。いや、戻らなければ。
この人の高座には華があります。噺家としての修行で培った華というより、もって生まれた華です。とくに若旦那が登場する演目は聴いていてウットリします。小米朝本人が若旦那そのものなので、どんなに修行したとしてもかもし出せない自然な若旦那の雰囲気を高座で見せてくれる。
ここ最近は都内近郊の落語会に出演したり、独演会を開催したりと関東でも小米朝の高座を観る機会が増えてきました。落語に本腰をいれて取り組んでくれるようようで、ファンにとってはうれしいこです。
【関連リンク】
立川談春
桂米朝一門
2007年度も彼らが落語界を引っ張る存在だということは間違いありません。ぜひ、彼らの高座を観て聴いて、今後の落語界の明るい未来を期待しましょう。
次ページで紹介するのは禁断の噺家です。もし、世間一般の笑いだけを求めているのであれば、次のページに進むのはオススメしません。上記の四人で十分2007年度も落語を楽しめます。