サザンを抱えるビクターエンタテインメントが、売れなかった背景~江ノ島の夕景~
人気アーティストを抱え、傍目には宝の山に見える「ビクターエンタテインメント」は、なぜ売却できなかったのか。音楽ソフト業界のリスクとリターンの解説、Part2です。
【Part2 INDEX】
■音楽のリスクとリターン「原盤権」2 ……P1
■ビクターと原盤権 もう一つの理由……P1
■ビクターのこれから……P2
・Part1の記事は、こちら
音楽のリスクとリターン「原盤権」 2
原盤権を持ちたいと考えるのは、レコード会社ばかりではありません。(1)で書いたように、アーティストの所属事務所なども、リターン(利益)の源である原盤権を欲します。しかし、誰もが原盤権を持てるわけではありません。というのは、原盤権を持つ者は、基本的に音源画源の制作にかかるすべての費用を負担することになるからです。原盤権は、「お金を出す代わりに、使用権を始めとして全ての権利を得る」というものなのです。
新人アーティストがデビューしてすぐに売れるということは少なく、売るためには相応の制作費や宣伝費等をかける必要があります。しかし、どんなアーティストも、ビッグアーティストに育ってくれるという保証はありません。原盤権を持つということは、もしかしたらそのアーティストが売れず、制作などに使ったお金が回収できないかもしれないという「リスク」を背負うことになるのです。
リスク(コスト)を背負えるだけの体力のあるとことと、リスクを背負ってでも自社の財産(作品やアーティスト)を増やしていこうという方針でないと、原盤権保有は難しいのです。
ビクターと原盤権 もう一つの理由
原盤権を誰が持つかについては、もうひとつ、「芸能界のルール」が働いているとも言われています。芸能界は会社対会社の関係のみならず、人と人の関係が強く、しかも複雑な世界です。ある音楽業界関係者によると、「業界内の人間関係の中で、原盤権者が決まっていくこともある」ということです。
今回のビクターの大物アーティストの原盤権がどこにあったのかなど、個々の契約関係はわかりませんが、コナミが、ビクターの資産価値を未知数と判断したということは想像できます。
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