テクノポップ/テクノポップ基礎知識

自転車で行った電子音楽イベント(5ページ目)

10月11日、田中雄二さん、松前公高さんによるトークイベント「60~80年代の電子音楽」が大阪で行われました。自転車に乗ってイベントに遅刻したよしの番長がレポートします。次回は11月8日。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

スパークスについて質問

番長:
よしの「1970年代後半のディスコ系テクノは黒人音楽のようなソウルフルな唄い方ですが、そこに唐突に登場したスパークスの「No.1 In Heaven」は非常に独特な唄い方で、そしてそれは「今のユーロビート歌唱の原型」のように思えます。このあたりに、歴史的な裏付けはあるのでしょうか?」と質問を投げかけました。

田中さん、この辺りの事も研究していたそうです。

(田中さん「元来、スパークスのヴォーカルであるラッセルは、カンツォーネをルーツとしたクラシカルな歌唱スタイルでした。そして、ジョルジオ・モロダーは、それまで、ドナ・サマーのような黒人歌手を、8分音符のシンセベース連打によってディスコ化する事を得意としていていました。「No.1 In Heaven」を制作するにあたり、ジョルジオ・モロダーとラッセルとの間で、異次元交配が発生し、あの名盤が生まれたんです。そしてカンツォーネをテクノトラックに乗せるに当たって誕生した「無機質な唄い方」はディスコビートとの相性が非常に良い事が判明した。これが、ユーロビートの源流の一つになったんです。」とのこと)

たしかに、本来のスパークスを知っていれば、ラッセルの通称「天使の歌声」は周知なのですが、ラッセルのカンツォーネ歌唱とジョルオ・モロダーの8分音符連打ベースとの融合が、ユーロビートの源流の一つとは、目の前で手品の種明かしをされたような気分でした。

ここで第2部は終了です。

先生:
第3部は時代的にそれ以降?

モンド系電子音楽

番長:
いえ、第3部は今までと一転して、いわゆる「モンド系音源」の紹介です。

まず、初期のシンセサイザーに付属していたデモンストレーション音源(シンセサイザーではこんな音を出せて、こんな音楽が演奏できますよ!と言う典型例)を披露。世界初のシンセサイザーであるRCAシンセサイザーで演奏された音楽なんか、僕、初めて聞きましたよ。

その後、「珍版発掘」として「宇宙交信器」(円盤からの声)、「The Sound of Love」(シンセサイザーによる愛の表現)など、非常に面白かったです。

他に、1960年代~1970年代のイギリスのジングル集を披露して下さいました。BBCから海賊放送まで、さまざまなラジオ局ジングルですが、これがモンド!

(田中さんのコメントで、「当時、シンセサイザーをマニピュレイター込みで借りるのは多大なお金が必要だった。放送局には潤沢にお金があったので、この頃のラジオジングルは電子音楽として素晴らしいものが多いんですよ」とのこと)

元々、ジョー・ミークを始めとして、イギリスの音源制作者にはブッ飛んだ人が多いのは知ってましたが、それらの人々が潤沢な資金をバックに電子楽器を手にしたら、ただではすみませんものね。

その他にも、田中さんは、アニメの効果音を時系列にそって並べて行き、電子楽器の進化にともなう効果音の進化を示してくださいました。

先生:
お二人ともこのあたりはかなり研究されていそうですね。
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