ロックンロールの生みの親といわれたボ・ディドリーが、6月2日に亡くなった。同じくロックンロールの開祖とされるチャック・ベリーやリトル・リチャードに比べると日本での知名度はいま一つで玄人好みのイメージがあるボ・ディドリーだが、音楽的な影響力でいえばまったくひけを取らない。とにかく幅広く数多くのミュージシャンに大きな影響を与えたカリスマミュージシャンだった。
独特のスタイル“ボ・ディドリー・ビート”
ボ・ディドリーがギターを弾き始めたのは10代の頃。そしてすぐにストリートで演奏活動を始めたという。その彼がデビューしたのは1955年のこと。最初のシングルは、芸名にもなった自分の愛称をタイトルにした「Bo Diddley」。これが大ヒットとなり、当時のR&Bチャートで1位を獲得している。
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ゲイトマス・ブラウン、バディ・ガイ、ロバート・クレイなどの曲を集めたオムニバス『はじめてのブルース~Evening Side』。ボ・ディドリーは「ビフォー・ユー・アキューズ・ミー」が収録されている |
ボ・ディドリーは1928年生まれだから、デビューは27歳の頃ということになる。ちょっと遅咲きにも思えるけれど、逆にいえばそれまでに蓄積したものも大きかったといえる。後の音楽に多大な影響を与えた独自のスタイルは、このときすでに確立されていたのだ。この「Bo Diddley」、そしてそのB面の「I'm a Man」を聴いてみれば、それだけでもボ・ディドリーのスタイルが、その後の音楽のルーツになっていることがわかるだろう。今聴くと、当然ながらサウンドこそちょっと古臭いけれど、タイトル曲の独特の泥臭いビートなどはとても強靭で、軽快なのだけれどパワフルに伝わってくる。「I'm a Man」は3拍子の典型的なブルーススタイルで、これぞ元祖ブルースというようなナンバー。言葉はよくわからなくても感情がダイレクトに伝わってきそうに感じられるところなどは、さすがはオリジナルといったところだろう。
ボ・ディドリーは、エコーやトレモロなどのエフェクトを大胆に取り入れたことでも知られている。「Bo Diddley」のユニークな浮遊感あるサウンド(今ではそう珍しいサウンドでもないが)も、こういったエフェクトによるものだ。また、1つのキー、1つのコードで延々と演奏することで独特のノリを創り出し、そこにソロを乗せるという手法も彼の特徴だった。
デビュー直後からすでに独特のサウンドやリズムを持ったスタイルは完成の域にあったようだ。そしてその特徴的なリズムは“ボ・ディドリー・ビート”と呼ばれている。これが後の数多くのミュージシャンに影響を与えることになったのだ。