苦境を乗り越えて大ヒットを連発した80年代
今回ともに来日するホワイトスネイクとデフ・レパードは、80年代の中頃に大ヒットを飛ばしたハードロックバンド。80年代中頃といえば、アメリカから巻き起こったLAメタルムーブメントの真っただ中。だからどちらもLAメタルのバンドというイメージを持つ人も少なくないようだが、ホワイトスネイクはディープ・パープルのOB会のようなメンバーで始まったわけだし、デフ・レパードはイギリスシェフィールド出身。どちらもイギリス発のバンドなのだ。とくにデフ・レパードは、LAメタルより少し前、70年代終盤にイギリスから起こった“NWOBHM”(ニュー・ウェーヴ・オブ・ブリティッシュ・へヴィ・メタル)のムーブメントの代表格とも言われている。
とはいえ、ホワイトスネイクは後の度重なるメンバーチェンジで、いわゆる“LAメタル人脈”のメンバーが出入りしているし、デフ・レパードがデビュー当時からアメリカの市場をにらんで作品作りをしていたことも事実。それに”NWOBHM”はその時期にイギリスからハードロック/へヴィメタルの新興勢力が次々に出現してきたことを示す言葉で、サウンドなどを定義するものではないから、“LAメタル”か“NWOBHM”かで色分けするのはさほど重要なことではないかもしれない。
1980年にデビューしたデフ・レパードだが、最初から順調だったわけではない。最初の2枚のアルバムの出来は悪くなかったし、本国イギリスではヘッドライナーでツアー、ヨーロッパやアメリカではレインボーやオジー・オズボーンといったビッグネームとともにツアーを行うなど知名度も低くはなかったはずだが、セールスは伸びなかった。それに加え、度重なる不運がバンドを襲うことになる。
最初の不運は3枚目のアルバムの制作にとりかかる頃、ギタリストのピート・ウィリスがアルコール依存に陥り、解雇されてしまったことだった。作品は売れない上にメンバー解雇というショックな事件が起きてしまってはやる気もそがれてしまう。普通ならここで暗雲たちこめてしまうハズなのだが、彼らは元ガールのフィル・コリンを加入させてアルバム制作を続行した。これが吉と出たのだからすごい。
デフ・レパードの出世作『Pyromania』 |