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70年代名盤レビュー『オペラ座の夜』(2ページ目)

ロックの歴史に残る名盤を紹介する名盤レビュー。今回は75年に発表され、独自のドラマチックな世界で今なお売れ続けているクイーンの『オペラ座の夜』の魅力を紹介。

執筆者:田澤 仁

独特のクイーンサウンドもここで完成

レッドスペシャル
シンセを一切使わなかった頃のクイーンサウンドの要、ブライアンのギターは手作りの「レッドスペシャル」。(写真は現在発売中のレプリカモデル)
独特のサウンドも、アルバム『オペラ座の夜』で完成に至ったと言っていいだろう。ゴスペルのような重厚なハーモニーや、何度も重ねられたギターオーケストレーションといった手法は、クイーンがこれまでのアルバムで少しずつ使ってきたものだが、このアルバムでは一気に完成度が上がり、どの曲も見事な「クイーンサウンド」になっているのだ。

ハードロックからピアノ弾き語り風の小曲、カントリーフレーバー漂う軽快なナンバー、コーラスが重苦しいヘヴィなチューンまで、曲調は多彩でどの曲も個性的だ。それにも関わらず、全体を通して聴くと見事に統一感がある。そして不要な曲がないばかりか、どの曲の中にも不要な音がひとつもないほど恐ろしく研ぎ澄まされている。こんなに練り込まれた作品を、前作からわずか1年ほどの短い間に完成させたことも驚きだ。

『オペラ座の夜』と合わせて聞きたい名盤

『華麗なるレース』
『オペラ座の夜』と合わせて聴きたい『華麗なるレース』。ここでもバラエティに富んでいながら見事に統一された、絶頂期のクイーンサウンドが展開されている
アルバム『オペラ座の夜』に収録された楽曲中でも、クイーンの歴史上もっとも有名な楽曲といえる『ボヘミアン・ラプソディ』は、ゆったりとしたバラードに始まり、ゴスペルばりの重厚なハーモニーの掛け合いから軽快なロックンロールへと一気に盛り上がり、最後は再びメロウなバラードで消え行くように静かなエンディングを迎える。バラエティに富んだ曲調をドラマチックに展開させるという作りは、まさにこのアルバム全体を凝縮したような作品だ。もしも『ボヘミアン・ラプソディ』は知っているけれどアルバム全体を聴いたことがない、という人がいたら、ぜひ全曲通して聴いてみてほしい。

ちなみにこのアルバムでは、管楽器や効果音のような音も聴こえてくるが、これらはすべてブライアンのオリジナルギター「レッドスペシャル」から作り出されたもの。この頃のクイーンはシンセサイザーを一切使わないことで有名で、歌詞カードなどには「no synths」とクレジットされていたほどだ。

この『オペラ座の夜』を聴いてクイーンの世界が気に入ったなら、その次に発表された『華麗なるレース』も聴いてみてほしい。本人たちも「この2枚は双子のアルバムのようなもの」とコメントしているように、『オペラ座の夜』と対をなす作風になっているから、こちらもきっと気に入るだろう。合わせて聴いてみると、頂点を極めた頃のクイーンの素晴らしさがよくわかるはずだ。

【関連リンク】
東芝EMIのクイーン情報ページ
クイーン公式サイト(英語)
「Brian May Guitar」ブライアン・メイ使用ギターのレプリカ制作メーカー(英語)
クロサワ楽器のBrian May Guitar情報ページ
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