演技は演出の延長
映画『相棒-CITY OF VIOLENCE-』より |
自分のシナリオを誰かに演じてもらうのと、自ら演じるのと、監督はどちらのスタイルが好きですか?
リュ・スンワン監督:
リュ・スンボムやチェ・ミンシクのように、芸術家のような雰囲気を持っている役者っていますよね。カメラの中に住んでいるような、そんな人たち。そういった役者と一緒にやるときは、彼らに演じてもらい、監督に徹していた方がやりやすいですね。でも、何回説明しても理解しない役者とやるよりは、自分がやったほうがラクです(笑)。
それぞれ長所と短所があるような気がします。どんなに上手い役者が演じても自分がやるのとは違うので、意図を説明するのは難しいものです。しかし、良い役者と仕事をすると、彼らの演技が持つ「意外性」を見つける面白さがあります。
ガイド:
日本映画やハリウッドの世界でも俳優兼監督という人はいますが、リュ・スンワン監督が目標としている人はいらっしゃいますか?
リュ・スンワン監督:
ウッディ・アレンのように、その人しかできない演技をする監督もいます。でも、僕は「この演技は自分にしかできない」と思ってやっているわけではありません。演じる理由は単純なんです。自分が表現したいアクションを演じてみただけに過ぎない。本格的に演技をするとか、ずっと役者でいたいと思っているわけでもありません。監督として一緒に作品を作ってみたい、魅力的な俳優はたくさんいるのですが(笑)。演技も演出の延長だと思ってやっているのです。
『相棒―THE CITY OF VIOLENCE―』のテーマは、「資本主義との闘い」であると監督は語ります。作中では幼馴染の関係が壊れていき、哀しい闘いを繰り広げるのですが、実は彼らが闘う引き金となったのは、カジノ誘致を巡る争い。幼いころの友情をも壊していく、資本主義と欲望の哀しみを、独特の映像手法で描いてきます。音楽使いやカメラワークなどは、‘韓国のタランティーノ’と称されるのも納得のセンス。男性も女性もリュ・スンワンワールドに引き込まれること間違いなし! です。
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