目薬はウソをつくこと
ちょっと緊張気味の笑顔も魅力的!? |
監督のキム・テギュンは、クォン・サンウの『火山高』やカン・ドンウォンの『オオカミの誘惑』など日本でも大人気の監督です。一緒に作品を作った感想とエピソードを聞かせてください。
ヒョンビン:
初めてお会いしたのは、3、4年前です。当時私は演技をする一人の青年に過ぎなかったにもかかわらず、さまざまなアドバイスをしてくれました。その頃から、チャンスがあればぜひともキム監督の作品に出演したいと思っていました。うれしいことに、思った以上に早く実現しましたね。好きな監督とご一緒できたため、撮影現場でも笑いが絶えず、幸せな時間を過ごすことができました。
監督と私は年齢の差がありますが、とてもリラックスした雰囲気でした。もともと監督は繊細な方で、納得いかないと何度も撮り直すなど、厳しかったそうです。しかし、教会に通うようになってからは、性格ががらりと変わったそうです。私と一緒に仕事をしたときはすでに180度変わった後だったので、撮影中に厳しいことを言ったりはしませんでしたね(笑)。
撮影のエピソードとしては、運動場を何周も走ったのが記憶に残っています。最初は百万長者の役だから高級車を乗り回すシーンしかないだろうと思っていたのに……(笑)。あまりにもたくさん走ったため、まるで映画『マラソン』の撮影をしているようでかなり辛かったですね。また、顔にカエルが飛んでくるシーンがあるのですが、青ガエルかと思っていたら、実際は大きなガマガエル。監督が何度も顔に投げるので、監督のことが憎たらしかったです(笑)。
プレス:
大泣きするシーンや、一筋の涙のシーンなど、涙を流すシーンがたくさんありますが、、苦労しませんでしたか?
ヒョンビン:
涙のシーンは、非常に難しいですね。実は、以前監督に私の涙はなかなか見ることができないと言われたことがあります。もともと私はそれほど泣くほうではありませんので、そういうシーンがあるときは朝から感情を掴むように努力しています。『百万長者』のときは体調があまりよくなく、気持ちを作り上げるのが難しかったですね。
最初に教えられたのは、涙のシーンでは必ず自分の涙を流さなければならないということ。子供だったら叩いてでも本当の涙を流さなければならないのです。目薬ではダメ、それはウソをつくことです。どんなにコンディションが悪くてもそういうものを使うわけにはいきませんでした。
イ・ヨニはスポンジのような女の子
プレス:ウナン役のイ・ヨニさんと共演した印象を教えてください。
ヒョンビン:
彼女は私よりも6歳下の現役の高校生ですので、キスシーンでは、何とも申し訳ない、悪いことをしているような気がしました(笑)。
キャスティング当初は、彼女に対して何も情報がありませんでした。監督が『俺を信じろ』とおっしゃったので、監督を信じることにしました。監督の言葉通り、撮影が進むにつれ、なぜ監督が彼女を選んだのかが分かるような気がしましたね。彼女はまるで、スポンジのような性格で、教えたことをすぐに吸収します。スポンジは、押すと吸い込んだものが中からばーっと出てくるように、彼女も吸収したものを表現することができる人でした。撮影を追うごとに、彼女の演技がどんどん良くなり、あるとき、カメラに映された彼女の姿を見た監督と私、そしてスタッフは同時に『彼女は変わった』と言ったことがあります。まさに努力を惜しまない俳優だと思います。
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