neoアジア映画祭inあさひかわ・2005
「もうひとつの韓流~韓国映画の底流と同時代の感性」をテーマにしたコリアンフィルム・セレクション、neoアジア映画祭inあさひかわ・2005。映画を通じて「厚み」を持って韓国文化を受け止める…というコンセプトのもと、韓国の歴史と民族性、そして今を共有する同時代性を表現した5作品をセレクトしています。■開催期間:11月5日~6日
■上映作品
「子猫をお願い」
監督:チョン・ジェウォン 出演:ペ・ドゥナ、イ・ヨウォン
社会に出たばかりの、20代初めの女性たちのそれぞれの夢と挫折をみずみずしく描く。インチョンの女子高の同級生だった仲良し5人組。ソウルの証券会社に就職する美貌の野心家ヘジュの挫折。両親を失い、今にも崩れそうなバラックに祖父母と住んでデザイン画を描き続けているジョン、彼女には定職がない。障害者の青年詩人のボランティアをしながら、サウナ業を営む家を手伝うテヒ。だが父親の無神経さにキレかけている。そして中国系の双子。───時間と共に距離が開き始める5人。上昇志向の強いヘジュは、誕生日プレゼントにジョンが贈った子猫を返してしまう。二人を仲直りさせようとするテヒだが…。等身大の女性たちの生の戸惑いが、韓国社会の生々しい現実の中に描かれる。
「酔画仙」
監督:イム・グォンテク 出演:チェ・ミンシク、ソン・イェジン、アン・ソンギ
激動の19世紀、李氏朝鮮時代末期。貧しい家に生まれ、筆1本で宮廷画家にまでのぼりつめた天才画家チャン・スンオプの波乱に満ちた生涯を、彼の描く絵と共にスクリーンに描き出す。監督は『風の丘を越えて―西便制』『春香伝』の巨匠イム・グォンテク。「長距離走者」として、韓国の生み出した美意識・価値観を世界に問う作品のひとつ。スンオプには『シュリ』『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクが奔放な野人を人間臭く演じ切っている。
「もしあなたなら~6つの視線」監督:パク・チャヌク、チョン・ジェウン 他
「韓国人権委員会」が製作した、「ヒューマン・ライツ=人権」を主題にしたオムニバス映画。『JSA』『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク、『子猫をお願い』のチョン・ジェウンなど気鋭の6人の監督が、おかしくも切ない“韓国の今”を見つめ、表現豊かにテーマに迫っている。
「マリといた夏」
監督:イ・ソンガン 声の出演:イ・ビョンホン、アン・ソンギ
ある雪の日、ナムの元を幼馴染のジュンホが訪ねてくる。ナムは彼と過ごした12歳の頃を思い出した。海辺の漁村に祖母と母と暮すナムは、事故で父を亡くしてから内向的になっていた。ある日、文房具屋で不思議なビー玉を見つけたナムは異次元に迷い込み、少女マリと出会う…。韓国ののどかな漁村やキャラクターたちがソフトなタッチでとても丁寧に描かれていて、日本の宮崎駿や押井守などの作品に決してひけをとらない。
「春夏秋冬そして春」
監督:キム・キドク 出演:オ・ヨンス、キム・ジュンホ
ひとりの男の一生を、四季の変化に重ね合わせる。春・純粋であるが故に、背負う無知の“業"。夏・恋と欲望を知る思春期。秋・裏切りに憎悪する成人期。冬・“癒し”と“再生”を求める壮年期。舞台は深い森の中、美しい湖に浮かぶ古寺。画面を覆うしたたるような緑と鏡のような湖面の、静謐さと様式美の映像感覚が素晴らしい。───自分を裏切った妻を殺して寺に逃げ込んだ男に、老僧は「怒りの心を消せ」と、床一面の経を彫らせる。厳しく美しい自然の中で、生きる意味や、人間の本質的部分をシンプルに描く。
■映画祭実行委員多田裕哉さんのコメント
「今回の映画祭は実際に映画館のスクリーンを借りての貸館上映です。地元では未公開の作品ばかり5作品を一堂に見られる機会を提供することによって、『韓国映画というのは奥深いものだ』『決してありふれたラブストーリーだけではない』というのを多くの人に知ってほしいと思っています」