あるひとつの劇団しかも女性だけの劇団が、公演回数1,207回、観客動員数298万8,000人という記録(初演&再演)を打ち立てた――これはすごいこと! 他にもいろんな記録を残しています。『ベルばら』を上演した翌年は宝塚音楽学校の倍率が跳ね上がる――劇場のトイレットペーパーの減る量が3倍になった――等など。もちろんチケット入手も困難。それほど人々に支持された『ベルサイユのばら』。ヒットする秘訣は何でしょうか?
まず――前回もお話しましたが、池田理代子氏原作の劇画を宝塚らしく作り上げたこと。脚本・演出はご存知、植田紳爾先生―宝塚歌劇団現理事長―です。植田先生といえばやはり1本物の大作というイメージがあります。『風と共に去りぬ』『戦争と平和』『夜明けの序曲』……歴史上の物語や原作のある物を、宝塚にふさわしい作品に作り上げるベテラン中のベテラン。『ベルばら』も植田先生の手によって豪華で夢のような舞台となりました。
初演時の演出に、長谷川一夫先生が加わられたことも特筆すべき点。“どうすれば美しく見せられるか……”生涯をかけて追求なさった長谷川先生の演出によって、ラブシーンをはじめ様々な美しい場面が出来上がりました。美しさだけではなく、気品や“あの大きな舞台で演じる”ということなど、長谷川先生から教わったことは貴重な体験だったことでしょう。
素晴らしいダンスシーンも数多く生まれました。私が一番印象的だったのは初演時のフィナーレでの“ボレロ”。一組の男女が大階段を使って踊る官能的な振りは、この手のものを振付けさせたら右に出る者はいない?喜多弘先生。また岡正躬先生の迫力あるバスティーユの場面も記憶に深い方が大勢いらっしゃるのでは? 再演時には羽山紀代美先生、黒瀧月紀夫先生らが平成『ベルばら』にふさわしいダンスシーンを作り上げられました。