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ヤツはなぜそれほどまでに熱いのか?(3ページ目)

『世界陸上』で見せつけた、深夜にしてのあの熱さ、あのハイテンション。しかし、その熱さ(暑さ)は松岡修造とは明らかに違う。振り返れば奴がいる。そう織田裕二、彼の熱さの根源と俳優としての変遷を探ります。

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

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熱くなったのは(WAKE ME UP GO! GO!)

青島刑事
やっぱり熱い青島刑事
作品を見ていくと織田裕二に「熱い」というイメージがついたのは『踊る大捜査線』からでしょう。『踊る』は刑事ドラマのパターンを確立した『太陽にほえろ!』のパターンを禁じ手にするところから生まれたドラマです。そのため警察を普通の会社的に、警官・刑事をサラリーマンとして描くのがコンセプト。

そこにサラリーマンから刑事ドラマにあこがれて転職してきた青島刑事がかき回す皮肉な展開が『踊る』のおもしろさの中心。その熱い青島刑事を熱い織田裕二が演じて、ドラマは成功し、織田裕二の「熱い」キャラも定着しました。

まだ『踊る大捜査線』だけだったら「演技でそうしているのかもしれない」という余地がありますが、織田裕二が本質的にそうだと決定付けたのは『踊る大捜査線』直後の97年夏から続けるTBS系での『世界陸上』のキャスター。全身から「陸上が大好き!」光線を発して、俳優としてキャラをつくっている要素もあるんでしょうがそれを差し引いても、本質的に熱いんだなあ、と世間が納得しました。

同様にスポーツ大会のキャスターで熱いキャラなのは松岡修造。二人を比較すると織田裕二は熱いけど暑苦しい一歩手前で踏みとどまっているけど、松岡修造は暑苦しい線に飛び込んでしまっていると思います。その違いは自分の熱さを自覚しているかしていないか、織田裕二はわかっていて自己パロディ的に演技もいれているようにみえます。

トラブルには理由が(Over the Trouble)

さて、視点をちょっと変えて織田裕二で話題になるもう一つはドラマ、映画現場でのトラブルが多いこと。いわれ始めたのは映画『卒業旅行 ニホンからきました』の時に金子修介監督が映画脚本専門誌「シナリオ」に撮影でのトラブルについて書き織田裕二のことを「人間として許せない」とまで書いたことから。その後も『踊る大捜査線』では柳葉敏郎との確執が話題になるし、『真夜中の雨』でも注文が多くて収録がなかなか進まないということがいわれました。

トラブルには双方言い分があるでしょうが、織田裕二はあまりいいわけめいたことはいいません(バトルになっても泥沼になるだけだし)。ただ関連して「テーマや方向性にまでかかわれる俳優になりたい」ということはいっています。

意見をいってつまらなくなるなら俳優のわがままですが、織田裕二の場合そうではありません。ドラマにしても映画にしてもおもしろいものが多く、悪くても大ハズレはありません。回りに意見をいうだけではなく自分でも真剣に役を掘り下げてキャラをつくりこみ、自分にも他の人にも厳しい姿勢で作品にのぞむことにより、主演作に「織田裕二印」の保証をつけています。

ドラマで『振り返れば奴がいる』『お金がない!』『正義は勝つ』『恋はあせらず』『真夜中の雨』の演出、映画で『ホワイトアウト』の監督と織田裕二ともっとも仕事している若松節朗は「織田裕二は麻薬だ」といっているそうです。そのこころは仕事をしてしばらくは顔もみたくなくなるが、結果を残すのでまた使ってみたくなる常習性があると。



ということで最後に「ヤツはなぜそれほどまでに熱いのか?」ということの答え。 「織田裕二は視聴者、観客に楽しんでもらうためのサービス精神の現れとして『熱い』、そして本人ももちろん根っから『熱い』」と結論づけたいと思います。
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