ガイド記事「スタッフから見る夏ドラマ」で『天体観測』のことを「最初は現代の『ふぞろいの林檎たち』というふれこみでしたが、エリートの伊藤英明、予備校講師の小雪、海外放浪から帰ってきた坂口憲二の三角関係が軸というのは、むしろ『愛という名のもとに』(唐沢寿明、鈴木保奈美、江口洋介)の方が近いですね」と書きましたが、初回を見ると予想よりさらに近い展開でした。
『愛という名のもとに』で物語の伏線になるのは学生時代に貴子(鈴木保奈美)を巡り、健吾(唐沢寿明)と時男(江口洋介)がプールで潜水競争をして、敗れた時男は放浪の旅に出ることで、これが終盤、他の登場人物にも視聴者にもあかされます。
ところが『天体観測』では、美冬(小雪)を争い、恭一(伊藤英明)と友也(坂口憲二)が同じく海の底に落ちた時計を拾う競争し、敗れた友也は放浪の旅にでますが、大きく違うのはそれが初回からドラマ中のシーンで表現され視聴者にはわかってしまうこと、そして美冬と友也が現時点では別れてしまっていることです。
これをもってネット上の掲示板などで「パクリだ!」といわれていますが、そうでしょうか。第一話はたしかにこれ以外にも『愛という名のもとに』に似た設定が多用されますが、二話以降はどんどん別のはなしになっています。
演劇などの研究で、ストーリーのパターンは36通りしかないという説があります。
それは極端にしても出尽くしているのは間違いありません。すべての新作フィクションは過去の作品の要素を抜き出して組み替えたものといえます。その中でいかに新しさをだすかがその作品のオリジナリティでしょう。
例えば『金曜日の妻たちへ3 恋におちて』。これはタイトルからして「映画『恋におちて』を元にしてます!」と宣言して(劇中にも映画が出てきます)、誰もパクリだなどということもなくドラマの方も不倫ものの名作として知られています。
『天体観測』も制作発表の時に「80年代には『ふぞろいの林檎たち』、90年代には『愛という名のもとに』と10年ごとに青春群像ドラマの名作ができている」と元ネタにふれていますので、引用してそれを超える作品をつくろうとしている、と認めていいでしょう。