ADHD、言葉の存在で振り回される親
Q:5歳になる息子は、おとなしくしていたかと思うと、急にそわそわしだしたりします。「騒いではいけません」「おとなしくしていなさい」と叱っても、まったく言うことを聞く様子がありません。ADHDではないかと心配になることもあります。大丈夫でしょうか?ADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)という言葉が知られるようになって心配になることもあるかもしれません |
また、ADHDかどうかを診断すること自体に否定的な医師もいるというのが現実。ですから、「注意が持続できない」「そわそわする」といったことが子どもにあると、「ADHDではないだろうか……」と単純化してとらえられがちです。「打撲で腫れる」「風邪で高熱が出る」などとは違い、親にとってはわかりくく感じられて、不安が増大するということがあるようです。
チェーンの外れた自転車
私は医師ではありませんので、ADHDの診断や治療については専門外です。それを断った上で私が大切だと思うことは、子どもの行動が間違っているのか、状況やシステムが間違っているのかの判断です。必要があれば、医師の診断を受けることが大切であるのと同じように、「子どもの行動に問題があるのか、システムに問題があるのかを真剣に考えること」も大切です。家庭や学校での教育システムに問題があるのに、子どもの行動を改善しようと思っても無理です。チェーンの外れた自転車を子どもに与えながら、「この子は自転車に乗れない」と言っているようなものです。この場合、修正すべきは、子どもの自転車の乗り方ではなく、自転車のチェーンです。
大人の常識のウソ
もしかしたら、いまの子どもたちは、「大人の常識や思いこみのウソ」を見破っているのではないかということもいわれています。子どもには「こういうときはこうすべきだ」という常識が備わっていません。ですから、本能的に間違っている、あるいは道理に合わない常識に対して反抗しているのではないかという考え方です。この考え方の真偽はまだはっきりとはわかっていません。しかし、常識とは時代によって変化していくもの。たとえば、一昔前は地球が平らだったという常識がありました。それが地球は球体だったという常識に変わりました。もしかしたら、地球が丸いという常識もいずれかわることがあるかもしれません。確かなことは「子どもの行動がおかしい……」と思ったときには、「本当に子どもの行動に問題があるのか」あるいは「親(大人)が持っている常識や思いこみに間違いがあるのか」を見直す価値はあります。