一本のボールペンから始まる文具メーカーの物語

今回お話をうかがったPENCOのデザイナー、菅原繁さん。

始まりは、一本のアメリカ製のボールペンだったそうです。ちょっと懐かしいムードの、ノック式のクリップにUSAと刻印があるシンプルなもの。「最初は、冗談だったんです。よく、カンパニーの略でCo、という表記があるから、Pen Companyならペンコだねとか言ってて」と、PENCOをトータルでデザインしている菅原繁さん。「で、古くからの友人でもあったハイタイドの社長と一緒に、実際にアメリカで製作したペンにUSAの刻印して売り始めたんです」

PENCO「ノックボールペン」各色189円(税込)

現在、その当時のペンはもう発売されていない。「やはり日本人には、アメリカ製のペンだと書き味に不満が出るんですね。現在は、BICと提携して、BICのメキシコ工場で作ったペンに、BICとPENCOの両方をプリントした形で販売しています」と菅原さんが言う通り、その始まりのペンは、現在、「ノック ボールペン」(189円)として発売中。流線型のフォルムがノスタルジックで、そこに、PENCOの特徴の一つでもあるカラフルなカラーバリエーションが軽さを加えて、日常的に使うのにとても楽しいボールペンになっています。書き味はBIC製ですからムラがなく実用的。こんな風に、一つのブランドの中でアイテムが継承されていくのは、文具ならではの愉しみでしょう。

こだわりのリングノートとPENCOの成長

PENCO「カレッジノート」903円(税込)

デザイナーの菅原さんは、株式会社スーパープランニングでティーンズ雑貨ブランド「s.papa」を立ち上げ、企画・デザインを担当していた経験もあり、ずっとノートを作りたいと考えていたそうです。「ノートを作る職人さん達との交流もありましたし、企画はずっとあったんですよ。欧州文具の雰囲気があって、日本の文具のように作りが丁寧な、そんなリングノートを考えていました。ペンの次はノートだろう、という気もありました。ペンをきっかけに、ペンを使うシーンのものが増えていったんです」と菅原さん。そして、細部までこだわり抜いた「BIG RING」が出来上がりました。

「リングが大きなリングノートで、罫線は職人さんに引いてもらいました。水性インクの罫線だから、文字が罫線で切れることもないんです。大きなリングは、 安定感があって開きやすく、表紙は凸版で箔押しと、とにかく凝った仕様でした。デザイン的には、罫線の色や紙の色で遊びを入れました」と、菅原さんが語る、初代の「BIG RING」は、とても評判が良く、売れたのだけれど、コストがかかりすぎるとやむなく止めることになったといいます。

しかし、PENCOのシンボリックなアイテムとして、現在、「ビッグリングノート」(L:714円、S:525円)や「カレッジノート」(903円)として、そのデザインと機能を継承した製品が発売されています。例えば「カレッジノート」は、広めの横罫にアメリカのメモパッドのような赤の縦罫が 入ったB6変形のリングノートで、120枚(240ページ)のたっぷり書ける厚みもデザインのポイントになっているという、細部まで良くできたノートで す。

裏表紙に描かれた機能と使い方のイラスト。このアメリカンテイストの仕上げと、欧州風の繊細さの同居がPENCOだ

裏表紙には、このノートがページごとに切り取れること、ポケットが四つ付いていること、といった機能が、やはりアメリカンテイストのイラストで説明されています。この、パッケージ裏のイラストによる機能説明も、PENCO製品の特徴の一つ。どれも菅原さんが自ら書いているそうです。「PENCOの製品は、まず製品があって、それに対するパッケージングやディテール、構成面でのデザインに凝る、というスタイルで作っています」と菅原さん。パッケージ裏のイラストも、その姿勢から生まれたもの。

英文字が並ぶ表紙。大きくてしっかりしたリングも、このノートの特徴の一つ。

「小さな文字の英文が並んでたりするのが好きなんです」という菅原さんの趣味もあって、PENCOの製品には、機能や特徴などが書かれた英文をデザインの一部に取り入れたものが沢山あります。「カレッジノート」の表紙や裏表紙もそうですね。「ノックボールペン」のロゴ部分も、あの細い軸の上に3行の英文が書かれています。ブランドのイメージというのは、そんな小さなこだわりの積み重ねで作られていくのでしょう。

リングノートの進化とカラーバリエーション
「ハンディノート」シリーズ

PENCO「ハンディノート」
左から
「ハンディエキスパートノート」525円、「ハンディミニノート」294円、「ハンディパルノート」399円
色は写真の3色の他、グリーン、ライトブルーなど全12色。

PENCOの最初のノートだった「ビッグリング」の思想は、現在、「ハンディノート」シリーズの 中に活かされています。「リングをダブルリングにして安定感を増したり、小型化、低価格化して、カラーバリエーションを増やしたり、という感じですね」と 菅原さん。特に、豊富なカラーバリエーションは、PENCOの特徴の一つ。「売れるだろうなあという色は、霊感的に決まっていくんですよ」と菅原さん。アイテムごとに、どんな色の展開で行くかは、PENCOの重要な課題。「候補を出して、会社に貼り出してもらったりするんです。そこから印象のいいものを選んでもらいます」そこで選んでもらったものから、よくあるものは避けたり、色の組み合わせが良いものを選んだり、意外性を考えたりといった作業を行い、「最終的には一晩寝かしてから決定します」と菅原さん。

リングが1段分低いところから始まっているので、リング部分にペンが差せる。PENCO同士の組み合わせはカラーが揃ってキレイだ。

「ハンディノート」シリーズは、リングの上部が一段分抜けていて、リングはノートの少し下の部分から始まっています。これは、リング部分にペンを差したとき、ペンの頭がノートから飛び出さないようにという配慮。このおかげで、リングがペン差しになるわけです。リングが大きめなので、ペンを差したままノートを開くことも可能ですし、太いペンも差すことが出来ます。その際、例えばPENCOの「ノックボールペン」「ファインライターボールペン」を使うと、ノートの表紙に色を合わせたり、色のコーディネートを楽しむことが出来ます。ブランド内でイメージやカラーがある程度揃っていると、文具を使う楽しさはさらに広がることを、PENCOは改めて教えてくれます。

ページごとに切り取れるミシン目入りの中紙。最終ページには紙製のポケットも用意されている。

また「ハンディノート」シリーズは、ページごとに切り取れるミシン目 が入っていたり、最終ページにはポケットが用意されていたり、全体を留めるゴムバンドが付いていたりと、様々な機能的を搭載した使いやすいノートでもあり ます。「普通に使えて、買いやすい価格で、でもデザインや機能にこだわれる、そんなブランドで、しかも、遊びもあるのがPENCOの面白さですよ」と菅原さん。実際、モノ自体は既に海外で作られているものを持ってきて、パッケージングや構成のデザインで、PENCOというブランドらしさを作っていく、つまり、文具メーカーそのものをデザインしているわけで、それはとても楽しそうだとガイド納富は思うのです。しかも、質の高いオリジナル製品もあり、遊び心だらけのパッケージもあり、「いつの間にか量販店などにもアピールできるくらいのラインアップが揃いました」と菅原さんが言うように、今や、PENCOは、 立派な文具ブランドの一つです。でも、それぞれの製品は、当初の「冗談から始まった架空の文具メーカー」という面白さをどこかで共通して持っています。そこが、ガイド納富はとても好きなのです。

ということで、次ページから、PENCOの製品の中で気になったものを紹介していきます。

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