一人のベンチャー社長のこだわりが生んだ
高音質イヤフォンマイクのナチュラルな音
ナップエンタープライズ
「inCore(インコア)」27,000円 (税込) 2007年12月31日までは キャンペーン価格15,000円(税込) |
新しいiPodが発表されましたし、このタイミングで良いイヤフォンの購入を考えている方も多いのではないでしょうか。iPodの登場以降、日常的に音を聴くことが習慣になると、気になるのは音の出口であるイヤフォンです。このガイド記事でも取り上げたShureの「E5c」などの高級イヤフォンの登場は、そんな、ポータブルオーディオを良い音で聴きたいというユーザーが増えてきた兆しだったと思います。
その後、様々な一万円を超えるイヤフォンが登場したのですが、ガイド納富としては、「E5c」を超える製品には中々巡り合えずにいました。そんな中で、偶然巡り合ったのが、ナップエンタープライズの「inCore(インコア)」という製品でした。この製品、専用のイヤフォンではなく、携帯電話用のイヤフォンマイクだと聞いていたので、最初は、あまり期待することなく試したのですが、まず、その音のナチュラルさとクリアさ、そして耳への優しさに驚きました。
資料などを読むと、イヤフォンの耳に差し込む部分の中に、マイクを仕込むことに成功した世界初の技術、という部分がクローズアップされていて、それはそれで凄いとは思ったのですが、その音質については、あまり情報がありません。でも、聞えてくる音は、その素直さでは「E5c」レベルで、しかも、無理に低音を強調したりすることがなく、高域がシャリシャリすることもなく、アコースティックな音から、落語やドラマ、ロックまで、聴きたい音を漏らさずに心地よく聴けるのです。
使えば使うほど、その音の良さに感動しつつ、細かい部分で、ここは何故こうしたんだろうとか、この音にどうやってたどり着いたんだろう、などなど、色々と考えてしまい、この「inCore」が、ナップエンタープライズ社長のこだわりから生まれたと聞いたガイド納富は、その社長に取材をお願いして、色々とお話を聞いてきました。その内容もまじえて、「inCore」を紹介していきたいと思います。
騒音の中でこそ真価を発揮する「inCore」の構造
実際に試しながら作られた工芸品のような本体で、 |
「inCore」を使っていて、いつも不思議だったのが、その言葉の聴き取りやすさでした。これまで、例えば地下鉄の中などでは、iPodの音量を最大にしても、落語などは聴き取れない言葉が沢山ありました。それこそ、Shureの「E5c」や、BOSEの「Quiet Comfort」のような、防音体勢がしっかりしている製品でないと、「言葉」は音楽以上に聴き取りにくいものなのです。
「inCore」も、防音性が高い設計になっているのは見れば分かります。五層にも及ぶ独自のイヤーパッドは、適当に差し込むだけで、きちんと良いポジションで耳に入ります。ただ、音を鳴らさずに耳に入れた状態での周囲の音の聞え方は、他のイヤフォンとさほど変わらないのです。ところが、音を出すと、それがはっきりと粒立って聴こえます。
他の手持ちのカナル型のイヤフォンで試したところ、iPodのボリュームを90%に設定して、やっと聴き取れる大江戸線の車内で、inCoreを使うと65%程度のボリュームで十分聴こえるのです。まず、この点を、inCoreの開発者でもあるナップエンタープライズの代表取締役、瀬戸信次氏に尋ねたところ、「何故、そうなるのかは、今、大学の先生が研究して下さってます」という答え。このinCoreという製品は、その開発過程で、ひたすら実際に試しながら試行錯誤を繰り返して作られたもので、理論については、まだ追いついていないのだそうです。
音漏れも少なく、長く聞いても疲れない音質
地下鉄の中でも快適に、周囲に迷惑をかけずに
iPodを楽しめる |
「それでも、小さい音量で、音楽や音声を楽しめるものを作るというのは、最初からのコンセプトでした」と瀬戸さんは言います。「周囲の音がうるさいからと、音量を上げて聞くのでは、長く聞くと疲れてしまうし、携帯電話のイヤフォンマイクとしても使い物になりませんから、まず密閉すること、消音することは、第一条件でした」と瀬戸さん。実際に使っていると、そのための工夫が随所感じられます。
例えば、このinCoreは、周囲への音漏れがかなり少ないのですが、それも、密閉構造であるのは当然として、他にも、音を耳に中に効率良く流すために、指向性を強く設定していること、ヘッドフォン内部でも、音を出すと同時に後ろ側に出る音を吸音する構造になっていることなど、たった2ccのイヤフォンのボディの中に様々な、音を密閉し、必要な方向にだけ出す工夫がこらされています。
スピーカー部に使われているのは、補聴器用のドライブです。奇しくも、Shureの「E5c」と同じですが、実際、音のクセの無さや、素直さなど、E5cと似た音で、あれよりも少しマイルドで歯切れが良い感じなのは、とても日本人の耳に合った音だと思います。だから、数分間だけ聞くと、もしかすると物足りないと思うかもしれません。一瞬のインパクトではなく、長く聞いていて、しみじみ良い音というか、聞き疲れしない音というか、不快さがとても少ない音という感じなのです。そのせいか、聞くジャンルを選ばないので、何でも聞くガイド納富としては、とても気に入ったのでした。
次のページでは、inCoreのイヤフォンマイクとしての実力と耳への優しさの理由を紹介します。