男のこだわりグッズ/文房具・小道具

作り手の感動を伝えるツールとしての万年筆

伊ビスコンティ社の新作「ディバイン・プロポーション」は「ダ・ヴィンチ・コード」でも重要な役割を果たす「黄金比」をモチーフにしたもの。その新作と共にビスコンティの万年筆へのこだわりを紹介します。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド


ビスコンティとレオナルド・ダ・ヴィンチ

ビスコンティ「ディヴァイン・プロポーション」
世界限定1618本 262,500円(税込)

ビスコンティは言わずと知れたイタリアの高級筆記具メーカーです。1988年にダンテ・デル・ベッキオとルイージ・ポリという二人の万年筆コレクターによって設立されました。その目的は、1920~1950年代の万年筆黄金時代を再現する筆記具を作ること。特に1930年代の上質なセルロイド軸の万年筆の復活など、古い素材の生産や、大容量のインクを吸入する機構の開発に力を注いでいます。

創業者の一人であるダンテ・デル・ベッキオ氏によると、ビスコンティで作っているのは単なる筆記具ではなく「作り手の感動を伝えるツール」であり「常に側に置いておきたい工芸品」であり、「その一本の筆記具の中に、歴史や文化を伝える意匠を込めたもの」なのだそうです。それを示すように、ビスコンティのロゴには「Art for Art's sake」という言葉が書かれています。芸術至上主義とか、芸術のための芸術、10ccの同名の曲は「芸術こそ我が命」という邦題が付いていましたが、そういった意味の言葉です。つまり、ビスコンティの筆記具は、最初から芸術品として作られているのです。

ガイド納富は、基本的には筆記具を芸術品として作るという姿勢が好きではありません。道具として極めた先に芸術が見えるというのは好きなのですが、「単なる道具ではなく」というような「単なる~ではなく」という文脈で語られるものは好きではないのです。「単なる~だからこそ凄い」というのが理想ではあるのです。でも、今回、ビスコンティの筆記具をまとめて触る機会を得て、色々触ってみて、「芸術を作ろうと志した筆記具」というものの凄みというか、その面白さも分かったような気がしました。

特に、この春のビスコンティの新作(5月20日発売)である「ディヴァイン・プロポーション」という万年筆に込められたアイディアと手間と技術を目の当たりにして、「こういうペンを使ってみたい」と本気で思ってしまいました。ダ・ヴィンチと黄金比をモチーフに作ったというだけあって、その万年筆はただきらびやかなだけの装飾過多万年筆とは一線を画すものだったのです。

黄金比を取り入れた万年筆「ディヴァイン・プロポーション」

常に捩れた直線を描くスターリングシルバーのラインが特徴

この万年筆は、あらゆる所に1:0.618という黄金比が用いられています。まず、キャップをした状態で、ボディの長さ1に対しキャップの長さが0.618の比率になっています。また、軸は辺が黄金比で分割される五線星形を内包する正五角形をオーム貝の螺旋の比率でもある144度に捻ったデザイン。この五角形の辺にあたる銀のラインはキャップをした状態でも、筆記時に外して軸の後ろにつけた状態でも、常に直線を描くように作られています。

この、キャップの着脱のメカニズムは、キャップの中を懸命に見たのですが、板バネ的なものを使っているらしいと想像するに留まり、実際のところは不明。ダンテ・デル・ベッキオ氏に尋ねても教えてくれませんでした。しかし、そのちょっとだけ抵抗を感じながらペンを押し込み、ホンの少しひねるだけでキッチリとキャップが装着されるメカニズムは、素早く書き、素早くキャップするという実用性にも富んだもの。

実用性という点では、「プッシュ&プル・タッチダウンフィリングシステム」という独自のインク吸入機構も優れたアイディアです。ペンの最後尾にある銀色の丸い部分を押すと、フィボナッチ数列(隣同士の和が右側の数値と等しい数列 1、1、2、3、5、8、13という風に続きます。これも黄金比関連ですね)が書かれたピストンが現れます。インク壷にペン先を浸したら、このピストンを押し込みます。それだけで、インクの吸入が完了。かなりの量のインクが入ります。パイロットの「プランジャー式」に似ているのですが、押し込むと吸引というのは、やはり謎というか面白い方法だなと思うのです。

黄金比を計る「ゴールデン・ゲージ」が付属

ペン先は18金。軸は木目調のセルロイド

そして何より、セルロイドを木目調に彩色した軸の持ち心地が、とても良いのです。五角形という形のせいもあるのですが、指に吸い付くような温かい肌触りは、セルロイドならではでしょう。キャップは後ろに付けない方がバランスが良いように思いました。ペン先は18金の大きめのもので、やや硬く腰がある感じのものです。ヘビーライター向けのように感じました。「芸術品」と言いつつ、細部まで「使う」ことを前提にしているように見えて、とても好感を持ちました。

黄金比が計れるゴールデン・ゲージが付属する

箱には、フタの裏に「ウィトルウィウス的人体図」(「ダ・ヴィンチ・コード」の中で、ルーヴル美術館の館長の死体に使われた形としても有名になった図像です)の元になった正五角形の図が描かれ、「ディヴァイン・プロポーション」と並んで、不思議な形のデヴァイダーのようなものが入っています。これは、身の回りにある黄金比を見つけることが出来る「ゴールデン・ゲージ」です。三つの先端が1:0.618の比率を保って開閉するので、身近なものにあてて黄金比を探せるわけです。

この「ゴールデン・ゲージ」は、「コンパッソ・レオナルド・ジェニオ」という商品名で販売されているものと、ほぼ同じ製品でしたので、これだけを買いたいという人は、次のページの関連リンクから「信頼文具輔」さんのサイトに飛んで下さい。28,350円で購入できます。

次のページは、ガイド納富が面白いと思ったビスコンティのペンを紹介します。


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