男のこだわりグッズ/グッズ関連情報

世界初かもしれない「やかんの本」とコレクションの楽しさ

プロダクトデザインとして、実用品として、生活雑貨として、骨董品として、ポップアイテムとして、様々な角度から楽しめる「やかん」の一大コレクションを初公開した「やかんの本」。一家に一冊ご用意を。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド


稚気と余裕が交差するコレクションの王道

麻布やかん組合編著「やかんの本」
ロコモーションパブリッシング 価格1,545円(税込)

身近といえば、これほど身近なものも無いというくらい、私たちの生活に密着している「やかん」。それだけに「やかん」は世界中で使われていて、とても多くの種類があります。しかも、道具としての歴史もかなり古く、ずっと、お湯を沸かす道具として、私たちの傍らにあり続けているのです。

その「やかん」の面白さに着目して、少しづつ集めていた人達がいます。それが、アートディレクターの渡邊かをる氏と、中国茶館海風號主人の設楽光太郎さんによる「麻布やかん組合」です。

「もちろん、日本、中国、韓国の古い焼き物っていうのが一番好きなんだけれども。あれはやっぱり、どちらかというと渋いものじゃない。やかんは非常にポップなもの。両方好きなのよ。そういう人って骨董の世界には割と少なくてね。だから、やかんでも作家モノだったりすると好きなんだろうけど、工業製品みたいなのは絶対買わない人たちなの。骨董好きって得てしてそういうのが多いの。偏ってるんだよ。」(「やかんの本」所収「やかん談義」より)

という、渡邊かをる氏の言葉にもあるように、「やかん」は、骨董的な魅力と工業製品としてのポップな魅力を合わせ持つアイテム。しかも、「たかがやかん」である一方で、失われていく文化でもあり、時代時代の空気を感じさせてくれる「デザインされた生活雑貨」でもあります。そんな「やかん」を集めるということは、馬鹿馬鹿しさを楽しむ稚気と、「やかん」の中の面白さを味わえる「大人の余裕」「審美眼」といったものの両方が必要。それは、正にコレクターの王道と言えるのではないでしょうか。

麻布やかん組合コレクションの集大成

1950年代のフランス製ホーローのやかん
1940年代(戦前)の日本のやかん

「やかんだって、古唐津のお茶碗だって、ものを見るときは区別も差別もしない。同じ視点ですよ。お茶碗でも、やかんでも、気にいったらさ、欲しくてしようがないのよ。相手にとっては迷惑な話なんだけど。」(「やかんの本」所収「やかん談義」より)

そうやって集められた、古今東西の「やかん」の名品が60点以上収録されているのが、「やかんの本」。モノと風景を専門にするカメラマン中村彰三氏が、やかんを撮影するための撮影台を開発し、キリンラガーのラベルなども手がけるスーパーアートディレクター渡邊かをる氏が、やかんの表情を最大限に引き出す角度を決定して撮影された写真は、リアルな質感を余す所なく伝えてくれます。「モノ」をキレイに撮りたいと思っている写真好きな方にも是非見てもらいたい、それほど優れた写真集でもあるのです。

1940年代のアメリカ製
設楽氏の「一番のお気に入り」
1950年代のREVERE社のやかん
このままのデザインで今も販売中
(ガイド納富の愛用品でもあります)

さらに、海風號主人設楽光太郎氏による、丁寧な時代の考証とやかんの素性についての情報、渡邊かをる氏による写真の並び順、そして、そのお二人によるやかんへの愛が溢れる「やかん談義」。それは「やかん」を通して、「モノの達人」たちが教えてくれる「モノ」の見方であり、人生の楽しみ方でもあるようです。


ガイド納富の「こだわりチェック」

「やかんの本」裏表紙に使われたやかんのリプロダクション
海風號では手に取って見ることも出来ます

実は、この本はガイド納富が、企画・編集・テキストなどに関わっていて、立場としては、この本のプロデューサー的な感じなのですが、そういう身贔屓を抜きにしても、本当に良い本になっていると思うのです。本がシュリンクパッケージになっているため、書店では内容が見られない場合がありますので、まず、このガイド記事で内容の一部を覗いて見てください。さらに、東麻布の海風號に行けば、その実物の一部も見ることが出来ます(ただし木曜日から日曜日に限ります)。

海風號店内にズラリと並ぶやかんは壮観です

本を見てもらえば分かるように、「やかん」と一口に言っても、本当に沢山のバリエーションがあります。ラグビー部の魔法の水が入った凸凹の大きなやかんもあれば、イタリアの高度にデザインされた真ん丸のやかんもあり、日本の昭和30年代に流行した、麦茶を冷蔵庫で冷やす為の四角いやかんもあれば、フランスのオシャレなオレンジ色の縦長タイプのホーローやかんもあります。この本の中に収録されたやかんの中には、1924年のクリスマスに父親から娘に贈られたということを示す刻印が入ったやかんまであるのです。

こういう本は、多分、この先もそうそう出ることはないと思いますが、「男のこだわり」や「コレクター心」をここまで沸き立たせてくれて、「モノを見る目」まで養ってくれる、とてもお得な本でもあるのです。その洒落心は、クリスマスプレゼントにも最適ではないでしょうか。


<関連リンク>

「やかんの本」の購入はamazonでどうぞ
「やかん」の実物が見られる海風號はこちら
版元ロコモーションパブリッシングの「やかんの本」紹介
ガイド納富の中国茶blog「Drinkin' Cha」の「Making of やかんの本」
渡邊かをる氏のプロフィールと仕事


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます