見た目もリアルで正確なムーンフェイズ
「ゼフィロス」のテーマが太陽だとすれば、もう一つの新作「ケファロス」は、月がテーマだ。マーティン・ブラウンは昨年、大きなムーンフェイズ表示を備える画期的な「セレヌ」を発表して話題になったが、「ケファロス」は、それをさらに発展させたモデルである。マーティン・ブラウン「ケファロス」。自動巻き、レトログラード・ムーンフェイズ、アニュアル・カレンダー(曜日および12ヶ月、レトログラード日付表示)。ステンレススティール・ケース(直径44mm)。303万4500円 |
ご覧のように、このモデルは6時位置にやはり大きなムーンフェイズがある。現在広く用いられている古典的なムーンフェイズでは、月を描いた回転ディスクが移動しながら満ち欠けを表示する方式。このモデルは反対に、「セレヌ」と同様に月そのものは動かず、月を覆う影のディスクのほうが移動する。時刻と連動して刻々と変化していく様子は地球から見た実際の月に近く、非常にリアルだ。リアルなだけでなく、時計が動き続ければ122年で1日分の表示誤差しか生じないという超高精度のムーンフェイズでもある。
しかも今回は、このマーティン・ブラウン独特のムーンフェイズに「レトログラード・ムーンフェイズ」という画期的な発明も採り入れられている。満月もしくは新月に達したときに影のディスクが逆行して元に戻る仕組みである。これにより、ディスクの可動範囲が小さくなり、複雑機構を収めるスペースの問題が解消。他のコンプリケ-ションの搭載も可能になった。「ケファロス」は、ムーンフェイズに加え、日付、曜日、12か月のトリプルカレンダーを備えるが、それも1年間修正が不要なアニュアル・カレンダー方式になっており、しかも日付は反復式のレトログラードという凝ったモデルだ。
彼の作る複雑時計は、ギリシア神話の登場人物からネーミングされている。先の「ゼフィロス」は、彼の代表作、日の出・日の入り表示付き腕時計に用いられている「イオス」の息子、この「ケファロス」は「イオス」と恋に落ちた人物だ。天文時計といい、ギリシア神話といい、なかなかロマンをかき立てるに巧みなマーティン・ブラウンである。
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