男の腕時計/その他の国の時計

今年も独自の手法が注目のクロノスイス

さる10月、ミュンヘン郊外の新社屋落成を祝ったクロノスイス。スイスの伝統的な時計づくりの継承者をもって任じるゲルト・リュディガー・ラング氏が作るこだわりの機械式時計を振り返る。

執筆者:菅原 茂

偉容を誇るクラシックな角形腕時計

時計の世界はじつに多士済々。機械式時計といっても、さまざまな人々が、それぞれの考えに基づいて独自のスタイルを確立している。とくに時計師が営むインディペンデントなブランドであるほど、それらが時計に色濃く反映されていて、ファンにとっては興味深い。

クロノスイス「インペラトール」
左:「インペラトール」。ステンレススティール・ケース、縦56mm×横36.5mm。自動巻き。68万2500円。右:「インペリア」。18Kローズゴールド・ケース、縦48mm×横30mm。自動巻き。134万4000円

スイスの伝統的な機械式時計を、ミュンヘンを拠点にして発表し続けるクロノスイスは、その代表的なブランドの一つだ。今年の新作「インペラトール」と「インペリア」の2本は、長方形の両側のラインが端にむかって広がりながらカーブするフレアード・ケースや懐かしい書体のアラビア数字を配した文字盤のデザインなどに特徴があり、まさに20世紀前半の優雅なアンティーク・ウォッチを彷彿させる。同タイプの角形ケースを用い、昨年好評を博した「デジター」の続編とも呼べるモデルだが、デザインはもちろん、クロノスイスのオーナーで時計師のゲルト・リュディガー・ラング氏自身が手がけている。

また、リューズを12時に移動して湾曲ラインの美しさをシンプルに際立たせたり、先端が一風変わったオリジナルの「コンスタンツ針」などにも、「時計はディテールが重要」と考えるラング氏の美学がよく表れている。演出過剰な複雑化や素材のハイテク化などがトレンドをにぎわす昨今、そうした流れには与せず、通好みの機械式時計のみを作り続けるという彼のポリシーは、新作の細部にも一貫して表れている。彼の時計づくりは、クラシックのたんなる再現とは違う。現代の時計として「新鮮さ」を発見させる微妙なサジ加減がじつに巧みなのだ。

もう一つ見落としてならないのは、文字盤に記された“CASP”という文字。これは“Certified All Swiss Parts”、つまり「全部品がスイス製であるのを保証する」といった意味。スイス時計を愛し、ブランド名さえも「クロノスイス=スイス時計」と謳うラング氏のこだわり、いや明確な主張がここにある。なぜなら、一般的に用いられている“Swiss Made”に疑念を呈しているからだ。クロノスイスの時計は、すべてスイスのサプラヤーの部品で作られている。だからこそ、今後はすべて“CASP”と誇りをもって記していくという。

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