新生「ダ・ヴィンチ」で飛躍するIWC(2ページ目)

クロノグラフの新機軸

ここ10数年、クロノグラフといえば、ムーブメント専門メーカーが作った汎用品を搭載したモデルが大半を占めていたが、最近では、自社でオリジナルのクロノグラフ・ムーブメントを開発する動きが活発だ。その成果がさまざまな形で一気に披露されたのが、今年のスイスの時計フェアだったといえる。


「ダ・ヴィンチ・クロノグラフ」もその代表的な一つである。特徴は、一般的なクロノグラフなら、それぞれが独立したサブダイヤルで表示される、クロノグラフの分と時間の積算計の同軸配置にある。しかも、分積算計は30分ではなく60分を採用。積算計というよりは、世界の別地域の時刻を示す第二時間帯表示のように見える。ケース右側のプッシュボタンがなければ、クロノグラフと気づかないだろう。巧妙にまとめられた積算計は、ユーザーにとってシンプルで見やすいが、それを実現する機構は複雑を極める。「一見シンプル、実は超複雑」というコンセプトが目立つ昨今、このクロノグラフにもそんな発想がうかがえる。

さらに、ベース・ムーブメントにクロノグラフ機能のモジュールを重ねる伝統的な設計とは異なり、部品の配列そのものを見直してコンパクトなサイズに時計機構とクロノグラフ機構を合理的に一体化している点や、クロノグラフ作動時に時計機構部への負担を減らし、つねに高精度を安定して維持するように考えられた動力伝達の仕組みも見逃せない。そこには、オリジナル設計にこだわった新世代クロノグラフ・ムーブメントに賭ける意気込みが感じられる。「技術のIWC」に惚れ込むファンにとって、この新型クロノグラフは、最も気になるモデルだろう。

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