スーパー・コンプリケーションの世界へ
屈指の高級時計ブランドで構成されるSIHHは、革新的な複雑時計を得意とするヴァシュロン・コンスタンタンやジャガー・ルクルト、A.ランゲ&ゾーネ、IWC、ジラール・ペルゴ、オーデマ ピゲ、ジュエリーウォッチに才能を発揮するピアジェやヴァン・クリーフ&アーペル、スタイリッシュなデザインで近づきやすいモデルを発表するボーム&メルシエなど、まさに多士済々だ。そうした時計のさまざまなジャンルをカバーし、なおかつSIHHの顔として堂々と存在感を主張しているのがカルティエである。いま述べたように、カルティエが発表する新作コレクションは、高度な複雑時計から、一般的な時計ファンにも親しみやすいコレクション、ジュエリーウォッチまで幅広い。とりわけ、本格時計愛好家たちから注目を浴びるラインが、「コレクション プリヴェ カルティエ パリ」。カルティエの歴史的な傑作をベースにしたデザインや、現代の時計技術の粋を集めた複雑機構などが、毎年コレクターを虜にしている。
「コレクション プリヴェ カルティエ パリ ロトンド ドゥ カルティエ グランド コンプリケーション」。デザインはあくまでもカルティエのクラシック・スタイルを守り、優美な趣が漂っている。世界10個限定というのも、マニアの憧れをかきたてる。プラチナ・ケース。手巻き。予価5565万円 |
今年の複雑時計では、「ロトンド ドゥ カルティエ グランド コンプリケーション」が仲間入りしたのが大きな話題だ。グランド コンプリケーションとは、複雑機構を複数組み合わせたモデルを指し、この新作にはトゥールビヨン、永久カレンダー、シングルプッシュボタンクロノグラフの三つが収められている。さらに、ムーブメントは8日間持続するロングパワーリザーブで、文字盤にその表示も備える。カルティエの時計はよく、「ジュエラーズウォッチ」というくくりで紹介されることも少なくないが、そうした紋切型の表現が意味を成さないほど、本格時計の実力を実感させる傑作だ。
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