実用的かつラグジュアリーな“タルガ”
タルガ4に最高出力345psの3.6リッター、タルガ4Sには385psの3.8リッターの、直噴化された水平対抗エンジンが搭載される |
タルガとは、ポルシェの登録商標で、ルーフ部分のみが開放されるオープンカーの形式である。これには面白い歴史があった。そもそもポルシェは356の時代からオープンモデルでも人気を博したブランドだ。ところが、'60年代に入ると一転、その安全性に問題アリと社会運動家のラルフ・ネーダーらに批判され、オープンカーそのものが凋落してしまう。
オープンカーの爽快さ、忘れ難し。
ポルシェは“文句”を言われない、安全なオープンカーと作ろうと工夫した。結果、生まれたのがロールバー付きのオープントップというわけである。そしてポルシェはこのスタイルを、当時世界選手権のかかった伊シチリア島のレース“タルガ・フローリオ”でポルシェ906らが勝利を得たことを記念し“タルガ”と名付けたのだった。
ちなみにタルガとはイタリア語で賞牌や楯の意味(他にナンバーなどのプレートの意も)。タルガ・フローリオはさしづめ、フローリオ(家)牌と言ったところか。
911シリーズが、俗にいう930ボディに進化してからも、アメリカ市場を中心にタルガの人気は衰えず、一時は911シリーズの約4割がタルガだったという。'80年代に入って、完全オープンのカブリオレが復活すると、さすがのタルガ人気もやや衰え、次第にオープンとは違う価値が求められるようになった。その回答が、現代のタルガに繋がるコンセプトカー“パンアメリカーナ”であり、それを具体化した993型の911タルガだった。
993タルガ以降、ガラスルーフと電動スライドトップの組み合わせがタルガの魅力となった。つまり、晴天のトップオープンはもちろん、雨の日でも空が楽しめるスポーツカーとして、独自の地位を得る。そして、996ではガラスハッチが開閉式に、さらには997でカレラ4ベースのみになるに及んで、911タルガはシリーズの中でも最も実用的でかつ最もラグジュアリーなモデルとして認められる存在となった。
リアシートを倒すと230リッターのラゲージスペースが確保される |
グレードは二種類。3.6リッターのタルガ4と、3.8リッターのタルガ4Sだ。いずれも6MTの他にPDKを選ぶことができる。
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