足回りは従来のサスペンション形式を熟成させたものですが、今回のモデルではアダプティブ・エア・サスペンションが採用されています。これはモードを選択すると足回りの硬さが変わると同時に、最低地上高も95mmから145mmまで変化するもので、95mmから120mmの間で自動制御されるオートモードを含め、走り方や路面に合わせたサスペンションフィールを選べます。モードというか車高の違いによる味付けの違いもそれなりにメリハリの効いたものになっていました。タイヤが40タイヤだった割には乗り心地もスポイルされておらず、高級車らしいラグジュアリーさを感じさせる足回りでした。
そのエアサスペンションのモード選択やカーナビ、自動車電話、オーディオなどは、センターコンソールに設けられた新しい操作系によってコントロールする仕組みです。すでにBMWのiドライブやオデッセイなどでもコントローラーによる操作が始まっていますが、A8のそれはなかなかロジカルで分かりやすいものになっていました。丸いボタンを囲んで4方向に上記の機能別の選択スイッチがあり、それを押すと液晶画面上では表示の色によってどの機能を選択したかがすぐに分かります。これだけで相当に操作性が高められていますが、ほかにも間違って操作したときには元に戻るリターンボタンが設けられているなど、初めて使うスイッチだったのに、思った以上に使い勝手が良いことに感心させられました。
A8の価格は990万円です。今回試乗したモデルはオプションが装着されて1100万円の車両価格になっていました。この価格のアウディを買うユーザーがどれだけ育っているか、これが大きなポイントになると思います。やはり高級車のジャンルではメルセデス・ベンツのSクラスが強いですし、最近ではBMW7シリーズもこれに追従しています。そこにほとんど新規参入に近いA8が挑戦するワケですが、保有母体も小さいだけに簡単にSや7と互角の戦いというワケにはいかないでしょう。ですが、独自のクワトロシステムの採用や軽快感、スポーティさなど、アウディならではの価値観をしっかり伝えていけば、日本でも一定量の販売は可能でしょう。昨年アルミボディに一新されたジャガーXJなども含め、このジャンルのクルマがにぎやかになってきました。