A8は高級車の中でも良く走るクルマだなというのが全体的な印象です。高級車・高額車ではありますが、オーナー自らがハンドルを握って走るドライバーズカーがアウディA8で、そのドライバーズカーらしい軽快感にあふれた走りを見せてくれます。
搭載エンジンはこのクラスのV型8気筒の中では最もパワフルなもので、246ps/430N・mの実力を発揮します。A8のボディは初代モデルと同様アルミ製のスペースフレームを採用していますから、これによる軽量化効果もあり、5mを超える大柄なボディでなおかつフルタイム4WD車でありながら、車両重量は2tを着る水準に抑えられています。そのことと、V8エンジンの軽快な吹き上がりが重なって走りの軽快感を感じさせるのです。トルクも十分すぎるくらいの数値で、しかもこれを3500回転で発生しますから相当な実力ですが、トルク感よりも吹き上がりのスムーズさとパワーフィールのほうが印象的でした。
トランスミッションは6速ATのティプトロニック仕様です。さらにステアリングの裏側にはパドルシフトも設けられていて、ティプトロをマニュアルモードにしたときに、右手側のパドルを引くとシフトアップ、左手側がシフトダウンという具合です。ATレバーを使ってもパドルを使っても良いのですが、高速コーナーでシフトダウンしたいときなどはパドルのほうが有利かも知れません。パドルはステアリングと一緒に回転しますので、ステアリングをしっかり握っていれば間違えることはありません。
また通常のステアリング操作時に誤ってパドルに触れることもありませんでした。従来のA8では5速だったATが6速になったことで、ギア比のワイド化が図られ、より力強い走りと滑らかな変速を実現しています。これもなかなか好感の持てるものでした。
ステアリングのフィールはかなりシャープな印象です。ポテンザRE040との関係もあるのでしょうが、指宿スカイラインのワインディングを走るとき、リニアなという以上にダイレクト感のあるシャープな切れ味を感じさせました。レスポンスの良さは悪いことではないのですが、スポーティカーではなく高級車のA8には、もう少し角の取れた感じのステアリングフィールが良いように思われました。