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後席は安全か? 衝突実験で検証!

ゆっくり走っている車内、しかも後席ならシートベルトはいらないのでしょうか? 後席の安全性を確認できる貴重な実車衝突実験のレポートです

執筆者:森山 みずほ


車内に安全な場所なんてあるのかな?



「車の中で、もっとも安全な場所はどこですか?」
こんな質問をよく受けます。車内での上座というのは運転席の後ろの後席だから、そこが一番安全なのでは・・という人も多いです。でも本当に後席は安全なのでしょうか?

先日、JAFでは出会い頭の事故を想定した衝突実験を茨城県つくば市にある日本自動車研究所(JARI)で行いました。

まず、なぜ今回の実験では出会い頭の事故を想定したのでしょうか?じつは18年度の事故件数(警察庁発表)を見ると、2分に1回の割合で車両対車両の出会い頭の事故が起きています。その数はなんと交通事故全体の3割弱を占めるほど多いのです。
そして出会い頭の衝突事故というのは、速度が遅いことが多いのでダメージは小さいのでは・・と思っている人も少なくありません。
今回の衝突試験は一般公開されたため、多くのマスコミも取材に来ていたのですが、なんと「衝突する車内に乗って撮影してもいいですか?」と聞いてきた人もいました。でも実際はどうだったのでしょうか・・・?

実験方法は時速22.5kmで走行しているセダンの左側面に、時速45kmで走行するミニバンが前面衝突するというもの。それぞれの車両にはダミー人形という、人間を模した人形を搭載。衝撃時に人がどんな影響を受けるのかを見るためです。
ちなみにミニバンの後席、運転席の後ろにはシートベルトをしていない女性ダミー、後席中央には2点式シートベルトを使い学童用シートに座った6才児ダミー、そして助手席の後ろには3点式シートベルトを装着した女性ダミーを搭載していました。
衝突
テスト前のダミー人形の様子。赤いTシャツの人形が非着用。奥の青いTシャツを着たダミーが3点式シートベルトを着用している



カウントダウンと同時に走ってきた車。確かに時速22.5kmというのは、人の目から見てもさして速いようには感じませんでした。しかし衝突の瞬間、ものすごい音と同時にぶつけられたセダンの側面は大きくえぐられ凄まじい状態に。そして衝突したミニバンもボンネットがめくれ上がるなど前面がグチャグチャになっていました。
衝突2
車は見るも無惨な姿に



出会い頭の事故。その時車内の人達は・・?

衝突3
ビデオの映像なので、少し見にくいですが赤いシャツのベルト非着用のダミーはBピラーに頭部を強打した後、シートの間に入っています。中央の2点式ダミーの子供は自分の膝で顔面を強打しています。

気になる車内の人(ダミー)の様子は・・。
シートベルト非着用のダミーの挙動は激しく、車載カメラの映像を見てみると身体、そして頭部もあちこちに強打していました。今回は窓ガラスが開いていたため、頭部が車外に大きく出る形となっていましたが、もしガラスが閉められていたら重傷となるほどガラスに強打していたでしょう。
 さらに今回の条件下ではダミーは後席空間の中にとどまっていましたが、シートベルトをしていない場合は、衝突時の角度や速度によっては前席に身体が飛んでいき、運転者など他の乗員に危害を与える可能性も十分にあるわけです。しかも角度などの悪条件が揃うと最悪の場合には、車外放出という可能性もあるわけです。


さて中央席に座っていた2点式シートベルトを使っていたダミーはどうだったでしょうか?
こちらは骨盤が拘束されたことで、身体が投げ出されることはなかったものの、上体が大きく折れ曲がり自身の膝で顔面を強打していました。さらに腹部にもかなりの負担がかかっていたこともわかりました。つまり2点式シートベルトは、身体が投げ出されることは防いでくれるものの、頭部が前方障害物(前席のシートバック)などに衝突することは防いでくれないのです。実はこういった衝突で頭部にダメージを受け、後遺症障害が残ってしまうことも珍しくはないといいます。

シートベルトをしていなかった二人とは対照的に
  無傷だったシートベルト着用ダミー


 シートベルトをしていないダミー、そして2点式のダミーともに傷害値は大きかったですが、それとは裏腹に3点式シートベルトを装着したダミーは過度な挙動もなく、身体全体がしっかりと拘束されていました。つまり3点式シートベルトは前方に頭部が衝突することも防いでくれていたわけです。

 今回の実験では街中での事故を想定していたため、速度も低かったです。しかも今回ダミーの動きを検証したのは、あくまでも加害車両(衝突したミニバン)です。それでも後席でシートベルトをしていないと想像を絶するダメージを負うことになるわけです。
そして実際の事故は速度も車種形態もぶつかり方も様々。「現実社会の衝突事故を考えると、全く予想できない危険性のほうが多く存在する」と専門家の方もおっしゃっていました。
そんな中で万一の時に、身を守ってくれるのは後席であってもシートベルトしかないわけで、いくら安全と言われる運転席の後ろであっても、シートベルトをしていなかったら自分の身体はもちろん、同乗者にまで危害を与えることになってしまうのです。
面倒だから、街中でゆっくり走っているから、などと言わずに後席でもシートに座るときは、シートベルトを絶対着用しましょうね。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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