トヨタから登場した新型車 ポルテの最大の特徴は、助手席側のみを驚くほど大きな間口で開く、スライドドアを採用したことにあります。しかもフロア高はなんと地上30cm。この高さは最近増えてきたノンステップバスと同じで、まったく出っ張りの無いフロアになっているのもバスと同じなんです。
実際に乗り降りしてみると、まさに家の玄関の段差を降りているかのような感覚で車内への乗り降りが出来てしまのには、驚きました。
しかも助手席シートバックを前倒しして前方に移動することで、足元空間を広げることもできるようにしています。ラウムのようにBピラーがないものの、ポルテの場合は、この助手席のシートバックに手を置くポイントがあるため、お年寄りや子供でも上半身を固定出来、かなり乗り降りもしやすく、介助もしやすく感じました。
さらに言うと、CMの中で展開されているように、傘をさしたまま車内に乗り込んだり、ヘタをすると子供を乗せたベビーカーのまま、車内に乗り込んでしまえるのです。
で、乗り込んでどうするか? 開発者の言葉を借りると「家では玄関の中に入ってから荷物を置いたり、傘を畳むはず。ポルテも同じでとにかく荷物を持ったまま玄関(開発陣の人達は、このスライドドアを玄関と呼んでいるのです)から入り、室内で作業して欲しいんです。今まで車外でやっていた動作を“車内”でできるようにしたい。それがポルテの発想なんです」荷物の積載も、子供をチャイルドシートに座らせるのも、とにかくまずは車内に乗り込み、それからやって欲しいという。
室内高は確かに高く身長157cmの私なら、首をちょっと下に向けるだけで直立姿勢をとれるほど。室内も広いし、完全にフラットなフロアが用意されているので、子供を抱いていたってなんの苦もなく室内で動けます。
となると、つまりはスライドドアを持つミニバン、と結論づけたくなるのですが「ミニバンではありません」と開発陣はキッパリ!ミニバン的に、狭いところでの乗り降りウンヌンだけでスライドドアにしたのではなくて、あくまでも“玄関”を造りたかったために大開口部が可能となるスライドドアを採用したというのです。
それにしても、これだけの大きな開口部、さらに背の高さを持っていると剛性面や安全面も気になってくるところ。なにしろ『サイドシル』と呼べるような出っ張りも、センターピラーと言うものも助手席側には見あたらず、見た目では、左右非対称のボディ剛性を持っているように思えるのだから。
でも走らせてみると、驚くほどフロアの硬さを感じるのです。極端な言い方をすると、まるで板の上に乗っているかのごとく、まったくねじれを感じないんです。この感覚があまりにも不思議だったので、設計図を見せてもらうと、このフロアの構造はかなり革新的で、まったく段差の無いフラットなフロアながら、見えないフロア下の部分ではバルクヘッドを設けてサイドシル的なものが造られていたり、排気管の周りにも補強を入れるなどして、かなり剛性を出しているのです。
さらに背の高さもあるため、ロール感を抑えたいということから、ファンカーゴよりもブッシュ類が固められ、ステアリングの剛性感など、全体的に1段締まった足回りにしています。そのため1720mmもの背の高さは走っていても気にならないし不安感も感じません。やや速度を上げてコーナーに入ると、さすがに大きなロールは出てくるものの、それでも不安とは無縁という感じ。
ただその代償もあり、乗り心地が少しゴツゴツした感じになってしまっていました。とくに低~中速域では路面に追従しすぎて、微妙な路面の凸凹もクルマの動きとなって表れてくるのです。とくに後席は、微妙にコツコツコツ・・と動いているのが、個人的にはとても気になった部分。
実際のところ、ロール感を抑えるか、乗り心地を重視するか? で開発中もかなり悩んだ部分だというのです。結果的に安心感を与えるためにロールを抑えるほうにウエイトが置かれたというのですが・・。
とにかく後席のスペースは半端なく広く、しかも助手席は、リアシートの前端まできっちりと下げることができるのです。こうすることで、リアに子供を乗せ(運転席側の後ろに乗ることになるのですが)、大人二人が前席に乗っても助手席と後席とのコミュニケーションがとれる、というのもポルテのポイントとのこと。それだけ後席に人が乗ることを考えているのなら、もう少し乗り心地が・・いやせめてシートだけでももう少し芯のある、身体が落ち着けるシートにして欲しかったなぁ、と思えました。シート自体はそれなりに大きいけれど、どうもクッションがフニャフニャで。運転席のシート表皮も、滑りやすくてお尻が落ち着かなかったのも気になった部分。
速さ的には徹底した街乗り指向で、ゆったりと乗るタイプ。エンジンは2種類あるがオススメは断然1.5l。というのも、まったく同じ場所を極力同じ速度で2つのエンジンを走り比べたのですが・・圧倒的に低速トルクのある1.5lエンジンのほうがアクセル開度が少なくてすむんです。感覚的には、常に1.3lエンジンの半分の踏み込み加減でよかった感じ。10・15モード燃費での差は少ないけれど、実質燃費の差はこれはけっこう出そうです。とくに毎日の通勤や買い物など、同じルートをルーティンワークで走る人なら、その差は大きいはず。
今回使ってみて、かなりユニークなクルマであることは確かです。でも子供とドライブにでることを考えると、運転席側から後席にアプローチできない(運転席のウォークイン機構もない)のは、かなり辛く感じてしまいました。スーパーなどの駐車場で、とくに雨だったりすると、やはり運転席側からアプローチして、少しでも早く車内に乗りたいし。色々な場面で運転席側からのアプローチというのは、けっこうある気がします。
どうせなら運転席側もスライドというは? と聞いてみると「一つの家に玄関が二つあったら迷うでしょ」とのこと。参りました。
ただマジメな話し、既存するクルマとは人の動きが若干違う。あえてそれを目指したクルマでもあるため「最初は少し慣れが必要かもしれません」とも開発陣の方は言ってました。そのためディーラーでクルマを見る時は、少し時間をかけて、そして個々の日常での使い方を何度も試してみして欲しいとも言っていました。
でも欲張りな私ちとては、玄関が二つあってもいいと思うんだけれど、みなさんはどうでしょうか?
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