重い空気がただようピットから、ふたたび2CVのステアリングを握って飛び出したのは16時30分ごろ。エンジンの吹けもブレーキの効きもタイヤのグリップも、さらによくなっている。今年の12耐は荒れ気味で、またもセーフティカーが入ったりしたけれど、1回目よりさらにいいタイムが出せた。何周かに一度だけ訪れる、誰もいない中速コーナーをクリアしていくときの気持ちよさは、今でも忘れられない。あの2CVが4輪ドリフトするのだから。ところが調子に乗って飛ばしていたら、駆動系から不吉な振動が……。
チーム監督に状況は伝えたが、ゴールまであと2時間半だからだいじょうぶだろうと楽観視していた。ところが残り30分というときになって、事態は急変する。2CVがストレートに戻ってこない! ドライブシャフトが折れたのか……という予想は、残念ながら当たってしまった。サクソと2台の106が12時間を耐え抜いてチェッカーを受けた、それからさらに30分ぐらいあと。2CVがキャリアに積まれてピットに戻ってきた。
4度目の12耐は、初めてのリタイアという結果に終わった。でも不思議なことに、そんなに悔しくはなかった。異変に気づいたあのとき、ピットに入れてチェックしたり、ペースダウンして完走を狙ったりという手もあっただろう。でもチーム深谷は攻め続けた。その結果のリタイアなら、悔いはないと思ったのだ。どんなに頑張ったって、他車を抜けないことはわかっている。それでも速さを追い求めていく。そんな2CV&チーム深谷と12時間いっしょに戦えたことを、誇りに思いたくなった。
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