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風の巻き込みはけっこう少なめ。フロントシートでは60km/hぐらいまでなら、サイドウインドーをおろしていても不快ではなかった。サイドウインドーを上げれば80km/hぐらい出しても平気。キャビンの上まで伸びたウインドスクリーンのおかげだろう。ただしリアシートは、60km/hぐらいがガマンの限界だった。
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意外なことに、2台の乗り心地にほとんど差はなかった。S16では扁平率が55から50になったタイヤの固さを感じるぐらい。ボディの重さのおかげだろう、どちらもハッチバックよりマイルドで揺れが少なく、ひとクラス上のクルマみたいに上質で落ち着いている。オープンにするとさらにしんなりした乗り心地になるが、ボディ剛性そのものは屋根のないクルマとしてはかなりしっかりしていた。
ハンドリングもクーペとオープンで少し違う。オープンでは畳んだルーフがリアに積まれるので、下り坂ではリアが回り込むようにクルッと曲がってくれるのが楽しいが、上り坂では前輪の接地感がいまひとつに感じることもある。WRC気分にひたりたいなら、やはりクーペにしたほうがいい。いずれにしても、ポテンシャルの高さはハッチバックゆずり。エレガントな姿に似合わず、けっこう楽しめる。
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おもしろいのはステアリングの切れ味が2台でけっこう違うことで、S16では切った瞬間にノーズがスパッとインに切れ込むようなフィーリングが、スポーティな雰囲気をアップしてくれた。乗り心地はほとんど変わらないのに、こういうところではきちんと違いを出してくるところに、プジョーのこだわりを感じる。
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デザインや乗り心地はおとなっぽいのに、走ればWRCのシーンを連想できる速さと楽しさを味わわせてくれる。307CCはボディだけでなく、走りも二刀流だった。とくに驚いたのはS16。ほかの307CCと同じぐらい快適なのに、206RC譲りのエンジンとMTが生み出す走りはスポーツそのもの。306のカブリオレとS16を1台にまとめたような、真のマルチパーパスカーだった。