エンジンは新型プジョー406のV6と同じ、可変バルブタイミングカムシャフトを備えた新型。エグザンティア時代のV6と比べると、2000rpmあたりから排気量相応の太いトルクを発生してくれる。ZF製がベースの4速ATはあいかわらず発進や変速時のレスポンスがゆったりしているのが気になるが、スピードに乗ってしまえば、アクセルに軽く足を乗せ、2000rpmあたりまで回せば流れに乗って走れるという、ゆとりのドライビングを味わわせてくれる。100km/hでの回転数はDレンジで2500rpmと、こちらも余裕たっぷりだ。
それ以上に感じたのは静かだということ。遮音が優れているのだろう、同じエンジンを積むエグザンティアや406よりもワンランク上。とくに流れに乗って軽くアクセルを踏んでいる状況では無音に近い。ATのマニュアルモードを使って4速から3、2速と落としていっても、音が大きくなったりはせず、エンジンブレーキの効きで初めてシフトダウンが体感できるほどだ。マニュアルモードのレスポンスは、通常の変速とは違ってレスポンスに優れており、満足できるものだった。
スタイルが示しているとおり、C5はハイドラクティブが持つ癖は弱めつつ、長所は引き伸ばした乗り味を備えていた。つまりは万人向けになったというわけだ。シトロエンを乗り継いだ人間にとっては個性が薄れたと感じるかもしれないが、他メーカーのクルマから乗り換える場合は喜ばれるだろう。ただしいずれにしても、圧倒的な静粛性を含めて、高級車と呼んでいい走りの質感を備えたクルマであることはたしかだった。
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