エンジンを掛けると、まず車高の上がりが早いことが今までのハイドラクティブと違う。最初の発進ではある実験をしてみた。センターコンソールのハイトコントロールスイッチを操作して、わざとローポジションをセレクトして走り始めたのだ。今までのモデルならそのまま走ってしまうところだ。しかしC5はすぐにシステムが異常を感知して、中央のディスプレイに大きな×印が描かれ、車高をノーマルに戻してくれた。

走り始めてから最初に感じたのは、「これって本当にハイドラクティブなの?」というもの。発進のときに緩やかにリアを沈み込ませたりすることはなく、その後もフワ~ンというゆったりした周期の揺れはあまり感じられない。でも良く観察すると、たしかにエグザンティアよりは少し固めではあるが、ガチガチだというわけではなく、段差やうねりはちゃんと吸収している。油圧の制御が今までに比べると速くなり、無駄な姿勢変化を最小限に抑えているのだろう。ブレーキ系が独立したおかげで、停車中にブレーキを緩めたときにリアが持ち上がったり沈み込んだりという変な癖もなくなった。

今までのハイドラクティブ(ハイドロニューマチックを含む)は、金属バネのクルマと明らかに違う乗り心地だった。おかげで乗り物酔いをもよおす人も少なくなかった。そんな人も、今度のC5なら平気だろう。逆に、独特の揺れ方にシトロエンらしさ、ハイドロらしさを感じていた人は、癖がほとんど消されたことで、寂しさを感じるかもしれない。ブレーキの踏み応えもカチッとした独特の感触はなくなり、他のクルマと同じようになった。この点でも賛否両論が出そうだ。

ただし繰り返すようだが、快適なのは事実。無駄な揺れはほとんどないし、上下の動きは小刻みではない。段差や路面の継ぎ目を除けば、とにかくひたすらフラットなのだ。今回は約100kmの試乗だったが、出来の良いシートのおかげもあって、疲れを感じる暇もなかった。もちろん直進安定性は問題ない。ステアリングは低速では驚くほど軽くて手応えもないが、高速道路に入るとアシストがカットされたかのような、しっとりとした重さを与えてくれる。

もうひとつ印象に残ったのは、ステアリングを切ってもロールがほとんど感じられないこと。今までのハイドラクティブもこの傾向はあったが、こちらはさらに頑固に傾くことを拒む。これも油圧制御のレスポンスが速くなったためだろう。そのためステアリングを切ると、いきなりノーズが内側を向く。この切れ味は今まで何度もハイドラクティブを試した僕にとっても新鮮だった。乗り心地とは違って、今まで以上に個性的だったということだ。

悪路や高速道路も走ったが、自動的に車高を上下させる機構は、運転している限り「変わったかな?」という程度にしか感じられなかった。癖を弱めているという点ではほめられるが、ダッシュボード中央のディスプレイにそのときの状況が何も表示されないのはちょっと残念だ。ハイドラクティブ3という独自のメカニズムを所有している満足感を盛り上げるためにも、アップやダウンを表示するような演出が欲しいと思った。