最も得意とするのはワインディングだろう。ロックtoロック1.75というクイックさは、このクルマがFFであることを完全に忘れさせてくれる。まったく仕様の異なる足回りは路面をがっちり掴んで離さないから、ドライバーとしてはとにかく多少手首をこねようがコーナーに合わせてハンドルを切り込みさえすれば、思いの外よく曲がってくれるのだ。
コーナーを駆け抜けながら、思わず自分がミズスマシになったような絵が脳裏に浮かんだ。
嬉しいのは、そのアシのセッテイングである。安心感を持ってガンガン切っていくのだが、スグにタイヤが悲鳴を上げ始める。といっても限界にきているのではなく、あくまでも注意信号にすぎない。スキール音なんて楽しむもんじゃないし、ヘタッピの証明みたいなもんだが、鳴らせながらなおコントロールできるというのは、やはり楽しいものだ。ちなみに電子制御ASRが装備されるが、これがなかなか控え目な効き具合で、スポーツドライビングの興をそぐようなことがなかった。つまり、ちょっとばかり滑らせても楽しみに変わりがない、のである。
どこからでも加速してくれるエンジンパワーで、とにかくどんなコーナーでも自然と頬が緩んでくる。楽しくてしょうがない、なんてクルマは久しぶりだ。あ、同じ感覚は147のマニュアルミッション車にもあったっけ・・・。GTAのシフトフィールはコキコキしているとまではいかないものの、スルイスルリと次のギアへ吸い込まれていく、心地よいものだった。
ブレーキだけは好みじゃない。これはイタリア車のサガみたいなもので、とにかくファーストタッチのあとに一瞬、空走してしまうのだ。最終的な効き自体は素晴らしいのだが、最初の1歩がダメ。まあ、ブレーキ踏みながらでも1ミリでも多く進みたいイタリア人の性格だろうか。ただし町中での最初の効きはいい。高速域でのタッチが不安、ということだ。
ちなみにフロントブレーキのキャリパーはブレンボである。