懐の深いコーナリング
走りで印象的だったのは、フットワークのよさです。まず乗り心地がいい。Chicであれば、乗り心地はC3と大差なく、Sport Chicはやや固めではありますが、この類のBセグメントのホットハッチの中では、それほど固いほうでもないといえるでしょう。サスペンションがしなやかによく動きながらも、フラットな姿勢を保ってくれます。
そして、直進性は非常に高く、ステアリングを切り込むと、穏やかに向きを変え始めるのですが、そのときにコーナリング外輪のタイヤが路面にすいつくかのような印象で、さらに深く舵を与えても、グリップが抜ける感じがしないのです。この感覚もまた独特です。
最近はちょっと切ったらグイッと曲がり、それでコーナリングがいいかのような印象を与えるという、小手先のステアリングゲインを高めたセッティングを施したクルマが多く、それもそれで楽しい面もあるのですが、本当の意味で「コーナリングが楽しい」というのは、そうではないと思うのです。
曲がり始めるときの反応、一体感、十分に接地感の得られる中で、攻めているという感覚。それらをこのDS3は、無理せず身に着けているように感じられました。懐の深い、本当の意味でのコーナリングが楽しいクルマという印象です。
不景気な世の中ではありますが、200万円台中盤という車両価格も現実的。MINIやフィアット500、アルファMiToなど、このカテゴリーには強力なライバルも居並ぶわけですが、シトロエンが送り出したカウンターパンチもかなり強力といえるでしょう。
惜しむらくは販売網。最近では、プジョーのネットワークを活かした体制を展開中ですが、まだまだ十分といえる状態とはいえません。しかしこのDS3は、そのハンデを補ってあまりあるほどの魅力を持った1台だと感じた次第です。