コンディションは雨… だが、雨がクルマの進化を明確にした
しかも路面がかなり荒れている上に、数多くの補修があるため、実に様々なサーフェイスが取りそろえられている。アップダウンも尋常ではなく、最も大きな勾配はなんと17%にも達するほど。そして言うまでもなく超高速…だからこの場所は、ご存じのように世界中の自動車メーカーが車両開発を行う聖地でもある。多くの自動車メーカーが、ユーザーの安全を考えるからこそ、命と引き替えに過酷なテストを行う場所でもある。皆さんは数々の情報から、このニュルブルックリンクの凄さを存分に知っていると思う。しかし実際にここを訪れると、それは確実に想像を絶したものとして感じられるだろうと断言できる。なぜなら、僕がここを初めて訪れた時には正直身震いがしたほどだ。早朝のコースに立つことができたのだが、その時に感じたのは何を隠そう「死のにおい」だった。当然ニュルブルックリンクのことを知っていたけれど、実際にそこに立つと、あまりの狭さにド肝を抜かれたほどだ。
そして実際に走っても、そこは想像以上の場所だった。なぜなら、コーナーのほとんどが4速か5速ギアでターンする、息をのむような超高速コーナーなのである。しかも超高速ゆえに、タイヤ1本分ラインを外しただけで、クルマはもんどり打って暴れ始める。路面はうねり、荒れまくっている…もし操舵やブレーキが遅れたら、それこそ取り返しの付かない状況に陥ることがままある…信じられないかもしれないが、本当にそういう場所だったのだ。
そんな場所を、今回はランサー・エボリューション9プロトタイプで走ることとなった。実はこの時を含めて、僕のニュルブルックリンク走行歴は3年間で5-6回というところで、周回数も100LAPに満たない。つまりニュルブルックリンク3年生。まだまだ本当に走り始めたばかりである。
そんな僕にとって、この場所を安定性の高い4WDで走れるというのは、とてもありがたいことだ。なぜなら、走るだけで緊張感が漂うのだから、少しは安心材料となるからだ。ただそれでも不安があることには間違いない。
こうして書くと読者の皆さんは、そんな僕にクルマの違いが分かるのか? と心配するだろう。事実、僕自身も心配していた。果たして以前のランサー・エボリューション8MRと、今回のランサー・エボリューション9プロトタイプの違いが分かるのだろうか? しかしそれは杞憂に終わった。
ニュルブルックリンクに来ると、いつも朝早く目覚めてしまう。単なる時差ぼけではなく、不思議と緊張感が漂っているからだ。到着の翌日、つまり試乗日の朝も僕は早くから目が覚めて、とても不安になっていた。なぜなら、目覚めは窓や屋根を叩く雨音だったからである。正直、心底ビビッていた。
雨のノルドシェライフェでは、自動車メーカーのテスターさえあまり走らないのが普通だ。理由は路面ミューが極めて低くなる部分がそこかしこにでき、非常に危険だからである。
僕はそれを知っていたが、この日はそれでも不安が募った。なぜなら、僕は幸運(?)にも、これまで一度もニュルブルックリンクの雨に遭遇していなかったからである。
しかし、無情にも試乗は始まった。
関連サイト
次期ランエボ9プロト(試乗編)ランエボ9プロト試乗記2
次期ランエボ9プロト(比較編)ランエボ9プロト試乗記3
次期ランエボ9プロト(進化編)ランエボ9プロト試乗記4