クラウン ロイヤルサルーン |
一方走りにおいて静粛性は高い。この辺りはまさにトヨタならではのもので、100km/hくらいまでは本当に同乗者と小さな声でコミュニケーションができるほどだ。ただ高速道路の追い越し時などにおける法定速度+α以上では風切り音が目立つ。キャビンが静かなために、余計にそれが目立つ。
せっかくなのでロイヤルサルーンについても少し触れておこう。走りは基本的にアスリートと同じだが、サスペンションがソフト志向で16インチタイヤを採用するため、乗り心地はもちろんこちらの方が上。操舵感もアスリートほど重みのあるものではない。
だがそれだけに、走らせた時の安心感や信頼感は薄目だ。高速道路では必ず両手でステアリングを握りしめることになる。乗り心地に関してもアスリートの18インチに対して16インチだからしなやかさはあるのだが、ライバル比では意外に微振動域でバタ付きがある。タイヤの性能も足りていないので、余計に華奢な感じもしてしまう。
まとめてみると、走りにおいてはライバルに匹敵する部分は少なかった。特にダイナミクスという点においては、ちょっと比べられないというのが本音だ。僕は今回のアスリートが、BMW5シリーズ並みの走りを手に入れているだろうと予測していたわけだが、果たして現段階ではそうではないようだ。
ただトヨタとしても、今回の試乗車の仕上がりは本意ではないようだ。話を聞くと、細かな部分で手直ししていく必要性があるという話を聞いた。またタイヤの銘柄がアスリート/ロイヤルそれぞれで1銘柄しか用意されていなかったため、他のタイヤを履いた場合には、今回僕が感じたネガティブな部分は払拭される可能性がある。その意味では、もう少し時間をかけて試乗していく必要があるだろう。また今回は、クラウンのみの単独の試乗であったため厳しく評価したが、実際に比較を行えば評価が変わる部分もあるだろうと思えるのである。
ただそれでも僕は、今回のクラウンの仕上がりに関しては疑問を抱かずにはいられない。細かな部分を直すことができた時、果たしてライバルはどれだけ進化しているのだろうかと考えるとやや不安を感じる。
それと今回アスリートに注目した、と冒頭に書いたわけだが、根本的な意見を言わせてもらえるならば、実はロイヤルサルーンとアスリート…という区別をしないでひとつの方向性にまとめて欲しかったというのが本音なのだ。
なぜなら、良いクルマならば絶対にひとつの方向性で多くの人を満足させるクルマになるはずだからである。BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスといったライバルを振り返ってみても、2つの方向性を持ったクルマ作りは行っていない。逆に1つの方向性をしっかりと貫いているからこそ、その上でスペシャルなMやAMGが存在するのだ。
そう考えると、クラウンにはこれまで以上に普遍的な要素が求められているように思える。デザインはもちろん、走りにおいてもそれはしかりだ。
また同時に来年8月に日本展開されるレクサスも非常に気になるところだ。なぜなら第一号として登場するだろうGSは、クラウンと血を分けた真の兄弟車だからである。メカニズムを共用して、どれだけレクサスならではの乗り味・走り味が生み出せるか、世界のライバルに匹敵するだけのポテンシャルを持てるかはとても気になるところだ。
しかしトヨタの力は強大なものであるから、この辺りは即座に変更・改良がなされるだろう。そしてレクサスがGSを出す時にこそ、BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスを超えるダイナミクスが出来上がるはずだ。そして同時にクラウンもまた、素早い対応によって世界のライバルに匹敵するだけのポテンシャルが与えられるだろうと思い合い。僕はその部分に強く期待している。
関連サイト
クラウンの疑問PART1