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アイシス01 アイシスのユーザーフレンドリィ

ガイアの後継モデルとして開発されたアイシス。助手席側スライドドアをセンターピラーレスとして乗降性を改善するなどのユーザーフレンドリィな設計を採用した新趣向のミニバンだった。

執筆者:川島 茂夫


「川島さん、今年の本命は何?」と聞かれると「うーん、ポルテかな」と答えていた。というのは日本カー・オブ・ザ・イヤーの話である。多分に、本命をはぐらかすための方便と思われていたようだが、実は本気だったのだ。まっ、結果的にポルテは10ベストに選ばれず、つまり予選敗退で、ボクにしてみれば本命なき本選となったわけだ。

で、何でポルテかといえば、クルマを性能で語るのもいいが、速さやスポーツ性を競いあうのもそろそろ食傷気味で、もっと違う視点からクルマを変える、進化させて欲しいと思ってのこと。助手席側を大型スライドドアとしたハイト系3ドアハッチは乗降性や後席の開放感で今までにないユーティリティと居心地を実現している。すべてのユーザーにベストの解とは言わないが、はまると換えがない存在になるタイプである。

ガイアの後継モデルとして開発されたアイシスには、そういった現実的な生活に根ざした価値観から発展した進化が見られる。

もっとも「そんな凄いのか」と思われても少々困る。大雑把に見て特徴と言えるのは、先に登場したラウム同様に左サイドをセンターピラーレスとしたリヤスライドドアを採用したことくらい。

センターピラーレススライドドアは遙か以前に、初代プレーリーが採用していたが、一部で好評を得たものの、その流れは途絶えてしまう。ニッサンの開発陣と話した時に、技術的には相当無理をしたとの言葉を聞いたことがあるが、そこまでして乗降性がよくなる程度のセールスバリューでは報われないのかもしれない。

しかし、今やクルマは個人の生活との相性が最も重要な選択ポイントであり、センターピラーレススライドドアがもたらした優れた乗降性は、これもまた、はまってしまうと換えがない大きな魅力である。

その他、インパネシフト部の張り出しを非対称として、助手席は広さをドライバーには操作リーチを小さくしたインパネデザインや助手席のワンタッチタンブル収納などなど、ユーザーフレンドリィな装備が数多く見られる。

とはいえ「ちょっと便利にするために大仰なことを遣っている」という面も否定できないのだが、それを価格に転嫁していなければ大歓迎。ちなみに全車に助手席側のパワースライドドアを標準装着し、1.8LのL.Xエディション189万円(消費税込み)である。インパネ周りやドアトリムの細部の造作に多少安っぽい部分もあるものの、装備と車格を考えるならば買い得感のある価格設定である。

基本的な実用性も気になるところだが、同社のラインナップで言えばウィッシュ以上ノア未満といったレベル。サードシートは平板かつクッションの薄い収納性優先設計。セカンドシートを前方にスライドさせることで、大人二人が座るに必要十分なスペースを得られるが、寛いだドライブを楽しめるような環境でもない。それでもウィッシュのチョイ乗り用サードシートよりも実用的であり、多少の我慢は必要なものの日帰りドライブくらいは何とかなるだろう。

サードシート収納は荷室床面に落とし込むタイプ。収納時はフラットな荷室スペースとなり、セカンドシートをゆったりとセットしても上級ワゴン以上の積載性を実現している。

多人数乗車とワゴン的な使い勝手のよさの折衷案的なキャビンユーティリティであり、1BOX型(ノア)のユーザーからすれば狭く、ステーションワゴン型(ウィッシュ)のユーザーからすれば無駄に大きいと思われるかもしれない。もちろん、アイシスにはまるユーザーは、まったく裏返しの意見、つまり、けっこう使えるサードシートに使い勝手のいいサイズと運転感覚がいい、というわけだ。

ユーザーフレンドリィはユーティリティを考える上での基礎になるが、そこを追い込むほどに個人の事情に入り込むような設計が必要になる。市場を「一山いくら」の感覚で見る限り、そんな考え方はナンセンスなのだが、それでもアイシスは一歩踏み込んでいる。ピラーレススライドドアにしても細かな使い勝手の配慮、ウィッシュ以上ノア未満のキャビンユーティリティにしても、これがベストバランスというユーザーも少なくないだろう。どのミニバンも今ひとつピンとこない、そんな人は一度アイシスを見てみるといい。
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