1コーナーに向けて操舵する。他とは格が違うことを改めて思い知らされる瞬間だ。古いエアバッグシステムを持ち、かつ電子制御されるパワステ機構を備えた現行のタイプSとはその感触が天と地ほど違う。ノンパワステかつエアバッグレスとされる点では初代NSX-Rも同じで、ステアリングからの感触は優れているのだが、初代NSX-Rとプロトタイプではその先にある手応えや重み、回転の滑らかさ、さらにそれらが生む情報の伝達量及びその質感に、シャシーの進化からくる圧倒的な差が生まれていると分かる。
装着タイヤが進化し、サイズアップされたこともひとつの理由だろう。フロントタイヤは215/45R16から、215/40R17へと低扁平化されたことで、応答性向上を狙った。リアタイヤは245/40R17から255/40R17へと接地幅アップを行い、限界性/コントロール性向上を狙った。また銘柄を最新OEMであるブリヂストンのポテンザRE070という、非対称パターンのハイパフォーマンスタイヤとし限界性能を向上した。
これらがそのまま操舵感の頼もしい手応えや重みとして伝わる。さらにこのNSX-Rプロトタイプの場合は、初代NSX-Rにも現行タイプSにもない空力性能の向上から生まれた、ボディを常にしっかり路面に押しつける感触がステアリングにも反映されるのだろう。加えてより高い運動性能を実現するためのサスの見直しもステアリングフィールに反映される。こうして様々な効果が相まって「格の違う」のステアリングフィールが生み出されているのである。
操舵に対する実際のクルマの動きも、反応が極めて素早く、かつ実際の動きもビシッと踏ん張ったままカッチリとした感触を残している素晴らしいものである。
次のコーナーへのアプローチから、ショートカットと呼ばれるS字を駆け抜けていくまでも、その後のストレートを越えた先にある90度に近いコーナーへのアプローチでも、さらに立ち上がって全開で加速しながら回り込んでいく130Rでも、NSX-Rプロトタイプは1クラス上の走りを常に感じさせる。
特に130Rはマイナスリフト化やリフトの前後バランスを最適化したプロトタイプの実力が遺憾なく発揮される場所でもある。