最近のコンパクトカーがこだわっているのは「音」である。小さい、安い、安っぽい、というコンパクトカーについてまわるこの最後の「安っぽい」を取り除くには、インテリアの質感向上と同時に、耳に届く音や振動を清く、優しく、心地よくすることが求められるからだ。
ヴィッツの音はどうか。最初に試乗した1・3Lは、エンジン音や排気音が、上手に遮断されていて居心地がいい。なんだか音が遠くから聞こえてくる感じなのである。高速道路を巡航走行しているときも、通常、1・3Lクラスともなると、隣の人と叫び合わないと会話できないレベルになるが、ヴィッツの場合は、静かな空間。これなら十分、会話が成立する。
さすがトヨタが誇るコンパクトカーのリーダーカーである。と、関心しつつ1Lに乗ったとたん、その感激がガラガラとくずれた。なんだ、この違いは。うるさい。とても同じ名前を持つクルマとは思えない。いいのか、エンジンサイズが違うだけでこんなに差をつけて?
トヨタの言い分は「1Lは価格を優先する人が多いので、それに応える価格設定にしたかった」。そのため、見えない部分である遮音材は排除されたのである。メーカーとしてそれもひとつの選択だろう。けれどバリバリとした音が耳に響き続ける1Lは、なんだかちょっと残念でならない。価格差と音。どっちをとるかといったら、私なら間違いなく車内の静けさをとるだろう。だって、1・3Lと1Lの価格差以上に「え?」というくらい1Lはうるさいんだもん。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。