さて、キャビンの設計だが、4.1mの全長のなかに大人6名がちゃんと座れるスペースの確保と使いやすい機能の2点が要点になっている。
コンパクトサイズのトヨタ3列シート車といえば、先にスパシオが登場しているが、サードシートはあくまでも緊急用。チャイルドシート並みの機能しかなく、長時間使用は難しい。シエンタのサードシートも、簡易型の設計になっているが、レッグスペースとヘッドルームに余裕を与えて、少なくとも寸法的には長時間の使用に耐えるようになっている。
またまた余談だが、トヨタのWEBでカーラインナップを見てみるといい。スパシオは「2BOX」分類、シエンタは「ミニバン」分類になっている(ちなみにハッチバックになった新型プリウスは「セダン」である)。スパシオは荷室に緊急用シートを備えた2BOX/ステーションワゴンであり、シエンタはトヨタが初めて開発したミニマム・ミニバンなのだ。
さらに余談を続けさせてもらえば、ファンカーゴの床下収納型後席仕様に乗ったことがある人ならば、カローラ店かネッツ店によってシエンタのサードシートを見てみるといい。ほとんど同じような構造になっている。
シエンタのサードシート収納はセカンドシート下に納めるのだが、ファンカーゴの後席と同じ手法。ただ、床に落とし込む時にセカンドシートを退避させなければならないが、セカンドシートはレバー操作ひとつで座面跳ね上げ及び前方スライドを行うので、操作そのものはごく簡単である。
セカンドシートの退避操作はサードシートの乗降性にも効果的。座面を跳ね上げることで稼いだ20cm弱程度のスライド量が、サードシートへのアクセスを随分と楽にしている。ついでに言えば操作レバーが大きくて、シートと一体のハンドアシストと兼用にしたデザインもうまい。こういうところで、しみじみと「ユーザー・フレンドリィ」を思ってしまう。
サードシートの座り心地だが、膝が高くなる着座姿勢はちょっと窮屈なものの、見た目ペラペラのクッションのわりに収まりがいい。加えて、前記したファンカーゴの後席よりもシートの建て付けがいい。セカンドシートの建て付けと比べればガタガタするが、気になるのは大きく揺れた時くらいである。
また、ミニバンにしては珍しく中央が空いたセパレートシートを採用しているのも長所。シートサイズは小さくなるが、肩寄せ合うような窮屈さがない。しかも、サードシート使用時でも間を通せば長い荷物が積めるのも利点。数値に表れる余裕よりも、使う人の気持ちを汲んでいるのが嬉しい。
開発した人の心配りが伝わるキャビンなのだが、どうしても気になるのがリヤスライドドア。ドア寸法そのものは大きいのだが、スライド量が短く、多めに見ても開口部の2/3くらいしか開かない。セカンドシート座面部はドアの背後なので、乗降はノレンをくぐるように頭から入る姿勢に限定されてしまう。荷物を抱えている時など車外から直接座面に腰を下ろして入ったほうが楽なのだが、それができない。
これはラウムのスライドドアにも共通する短所。開発陣だって、そうしたくはなかったのだが、リヤドアよりも後ろが短いためドアガイドレールを長くできない。スライドドアの開閉構造そのものをブレークスルーしなければ、このサイズで全開は不可能。開発陣は泣く泣く、短いスライド量に甘んじたわけだ。(シエンタのキャビン02に続く)
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