マーチのシステムも、例えば回生ブレーキ機能と駆動用のバッテリー、さらに大きな負荷領域でも使える大容量の駆動モーターなどなどを付加すれば、エスティマのようなハイブリッドシステムに発展する可能性は高い。実際に、このシステムの開発ではそういった発展性を視野に入れている。
そのシステムをポテンシャルを生かし切っていない、というのも正直な感想なのだが、このシステムの狙いが経済性と実用性の融合にあり、中でも価格と荷室の実用性を重視というならば、納得せざるを得ない。
例えば、FFをベースとした機械的な4WDシステムでは、プロペラシャフトのためにフロアパンや燃料タンク、場合によってはリヤサスも専用で開発しなければならない。マーチのシステムでは中央部から前のフロアは共通であり、リヤサス周りの変更も僅かである。荷室周りのスペース効率のよさはミニバン系への4WDシステムとしてメリットが大きい。さらに、高価なブラシレス交流モーターを用いないのも低価格のため。モジュール化された設計は他の車種への展開を容易にするので、量産効果によるコストダウンも期待できる。
降雪地域のための4WD、つまり生活四駆として、燃費等の4WDのデメリットを最小限として最も重要な圧雪氷盤路での発進あるいは登坂で最高の性能を低価格で実現することを目的にする。
とは言うものの、5ドア14eのFF車とe-4WD車の価格差は18.0万円。ヴィッツの1.3L5ドアUのFFと4WDでは16.0万円。価格の直接比較では低価格とは言い難いが、トラクションコントロールの装着を考えるならばお得。AT車のモード燃費で比較するとマーチはFFに対して約9.8%ダウン、ヴィッツは約7.8%ダウンになる。因みに4WD車同士のモード燃費は同じ16.6km/Lになり、マーチのほうが燃費ダウン幅が大きいのはFF車の燃費のアドバンテージによるもの。1.4Lのアドバンテージ(最高出力はマーチが10ps大きい)を考えるならば高性能なわりに燃費がいいことになる。
多少、言い訳がましくなってしまったが、同じ電動4WDシステムといってもエスティマとは狙い所がかなり違っているのだ。しかし、スペース効率の利点など考えると今後の展開にはかなり期待ができる。次期プレーリー・リバティやセレナに採用される可能性は非常に高く、その時にこの電動4WDシステムの真価が最大限に発揮されるのだろう。
・・・しかし、どうも技術の出し惜しみ、って感じを受けてしまうのはボクだけだろうか。リバティやセレナに採用する時には是非、簡易型でもいいからハイブリッドにして、2WD車と同等以上の燃費にして欲しいものである。
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