新型となったフォレスターに試乗してきたわけだが、そのインプレを述べる前に、先代のフォレスター、そして新型車にも継承されたコンセプトの理解をまず読んで欲しい。
ボクの執筆活動のメインステージ(仕事の9割以上ですから)となっている自動車専門誌の「月刊自家用車」でSUV関連の記事を書く時に、「オンロード」「オフロード」「ラフロード」を使い分けている。「オンロード」は、いわゆる舗装路のことと直ぐに理解して貰えると思うが、けっこう紛らわしいのが「オフロード」と「ラフロード」。未舗装状態ということでは同じかもしれないが、ボクにとってSUVの走りの特徴を語る上では、この二つは明確に区別されなければならないのだ。
「オフロード」は文字どおり道路ではない所。もっとストレートに言えば「がれ場(荒れ地)」であり、本来クルマが走れないような場所である。「ラフロード」は未舗装であり、多少荒れていても道路の様を呈している状況だ。本気でクロカンをやっている人には「釈迦に説法」だが、「オフロード」と「ラフロード」では求められる悪路踏破性が異なり、場合によってはサスチューンもまったく別になってしまう。
クロカン・マニアの人を除けば本格的なオフロード性能が必要となる人は稀であり、アウトドアスポーツ&レジャーを趣味にしていたとしてもラフロード性能が十分ならば問題はない。つまり、SUVの多くがターゲットとするユーザーニーズでは、十分なラフロード性能が確保されればいいわけだ。本格的なオフロード性能を求めて、乗用車に求められる他の部分が犠牲になるよりも現実的なメリットが多いのも、説明する必要もないだろう。
フォレスターの開発コンセプトは、正にその通りなのである。登場時には本格的なオフロード性能を備えなかったことから、「オフローダーもどき」のような言い方で非難する人もいが、時代の風向きはフォレスターのコンセプトと一致していた。
新型車の考え方は、初代と基本的に変わっていない。街乗りにも扱いやすいサイズであり、女性ドライバーが日常のアシとして使っても苦労がない。事実、北米市場では女性ドライバーが多く、つまりポスト・セクレタリーカー(小型クーペ)として認知されている。日本でもウイークデイは奥さんのアシとして活躍するファミリーカーが当たり前になりつつある今、これは大きな長所である。
「オン&ラフ」の走りのバランスは、どちらかといえばオンロード重視型に変化していた。ただし、ラフロード性能を低下させたと短絡してはならない。NA仕様車の5速MTにはデュアルレンジ(副変速機)が採用され、タイヤはSUV用(デューラーとかジオランダーなど)のH/T、つまりはオールウェザーが装着されている。ラフロードでの走破性もレベルアップを図ったと考えていいだろう。
オンロード性能の向上は、それ以上である。アルミボンネットなど軽量低重心をさらに勧めることで、基本的な操安性のポテンシャルアップを図っている。さらにフレーム剛性の向上。とくに高速安定に大きく寄与するリヤサス周りの剛性アップが新型車のシャシー設計ではポイントとなっている。その結果、走りの安心感は、かなり向上している。