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スパシオNo.01 新型スパシオの継承と進化

ふだんはお母さんと子供が買い物や遊びで使いやすく、休日には家族でレジャードライブ。友達と一緒に一台で出かけることもできる。街中であつかいやすいだけでなく、山岳路や高速道路も苦にしない深みのある走り。ステーションワゴン型ミニバンでは最小のボディサイズに、乗る人への優しさと日常に立脚した本当の使いやすさを満載したのが新型スパシオである。

執筆者:川島 茂夫


スパシオをミニバンとして理解している人は少ないかもしれない。事実、従来モデルの後半は2列シートの5名定員仕様が販売のメインであり、それは適応ユーザーニーズも室内の雰囲気もステーションワゴンとあまり変わらなかった。しかし、元々スパシオは3列シートを基本に開発されている。ただ、セカンドシートを小幼児用に割り切ってしまった独特なコンセプトは、あまり一般性が低かった。ハマル人はゾッコンになれるが、スイートスポットからずれた人には使いにくかったのだ。

あまりに絞り込みすぎた先代の反省か、新型スパシオはキャビンユーティリティの改善を図り、フロント/セカンドシートを一般的なミニバンやワゴンと同等として、サードシートをエマジェンシー用としている。子供2人の核家族を対象にしたステーションワゴン型ミニバンでは標準的なキャビンユーティリティだが、カローラセダンよりも短い全長で3列シートを実現するために、サードシートはかなり割り切った設計を採用する。座面をハンモック状にしているため、座り心地はあまりよくないが、必要な時の短時間使うならは、何とか納得できるくらい座り心地だ。収納した状態がスタンダードなのである。

サードシートの見栄えも、いかにも簡易フォールディングシートといった感じで、エマジェンシー用以上の用途を期待させない。つまり、実車を見れば、スパシオの3列シートが何を目的に造られているか一目瞭然なのである。できもしないことを、できるように見せるクルマが多い中、こういった正直さも好感が持てる。

もうひとつのスパシオの長所が、狭い場所での取り回しのよさ。先代よりも多少大きくなっているが、それでもFF1.5 L車の最小回転半径は4.9mでしかなく、街中での扱いは小柄なタウンカーとほとんど変わらない。ふだんは子供と一緒に買い物を近所の友達と近場に遊びに行く、奥さんのアシとしても非常にまとまりがいい。

さらに、この取り回しをのよさをアシストしてくれるのが、DVDナビに採用されたバックガイドモニターだ。後退時にナビのカラー画面に後方視界を映し出すのだが、そこに車両サイズや舵角による予想進路まで映し込んでいるのだ。しかも、縦列駐車では切り返しのタイミングや舵角を音声でガイドまでしてくれる。優しさ満載といった感じだ。

さらに走りも見逃せない。動力性能は実用車らしいもので、燃費と動力性能、扱いやすさのバランスを身上としている。1.8L車でも、刺激的な加速は味わえないが、1.5L車でも過不足なく走ってくれる。カローラ系らしんまとまりのよさがだが、驚かされるのはフットワークのよさ。短い全長と高い全高を感じさせない、しっとりとした操縦性と乗り心地が特徴。山岳路や高速道路でドライバーに扱いやすいだけでなく、ドライバー、同乗者ともに安心感があるのが何より。エンジンもさることながら、フットワークにスパシオの底力と乗員への優しさが感じられる。

小さなミニバンだが、内容の濃さでは今後けっこう大きな存在になりえるクルマである。まだまだ語り足りないのだが、このスパシオについては月刊自家用車の今月号にライバルを交えて試乗を行っているので、興味のある方はそちらを見て欲しい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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