モータースポーツ/WTCC(世界ツーリングカー選手権)について

世界一の喧嘩レース、WTCCが熱い!

いつでもどこでもサイドバイサイド!前のマシンを押してでも抜く!「世界一の喧嘩レース」と形容されるWTCC(世界ツーリングカー選手権)の2010年の見所をご紹介。今後、要注目のレースカテゴリーです!

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

ハコ車レースの頂点、WTCC!

WTCCのスタートシーン
【写真提供:WTCC】

「いつでもどこでもサイドバイサイド!」「前のマシンを押してでも抜く!」「シケインは真っすぐ走るもの!」こんなとんでもない常識外れのレースといえば、WTCC(世界ツーリングカー選手権)。フォーミュラカーのF1世界選手権、GTカーのFIA-GT世界選手権と並ぶ、ハコ車ナンバーワンを決める世界選手権です。

2010年はBMW、シボレー、セアトなどのメーカーが激突し、日本を含む世界11カ国で22レースが開催されています。

日本ではGTレースが高い人気を誇りますが、WTCCのような市販車をベースにした純粋なハコ車レースは今後大きな人気を獲得していく可能性があります。GTにも負けない迫力のアグレッシブな走り、バトルが売りのWTCC。今回はその魅力に迫ります!

世界一の喧嘩レース!

WTCC(世界ツーリングカー選手権)に参戦する車両は「SUPER GT」に代表されるGTレースとは異なり、4ドアセダンや5ドアハッチバックが中心です。
BMW、シボレー、セアトなどが出場するWTCC
【写真提供:WTCC】

WTCCでは「スーパー2000」と呼ばれる世界共通の規定に基づき、年間2500台以上生産された4座席以上を有する車両をベース車両にしなければならないので、必然的にスポーツセダンやファミリーカーなどが出場することになります。レース仕様車といっても、改造範囲は非常に狭く、より市販車に近いものになっています。

これだと車両の素性が大きく差となって現れてきますが、ウェイトの調整などで性能差をなくすことにより、イコールコンディションをキープ。またレースの重要な鍵となるタイヤも日本のメーカー「横浜ゴム」がワンメイクタイヤを全車に供給することで、同条件下でのレースを実現させています。


そのため、ドライバーたちはぶつかってでも抜いて行くという激しいバトルをコース上で展開します。まさにこれこそ「サーキットの格闘技」「喧嘩レース」と言われる所以でしょう。

テレビ向けのエンターテイメント

WTCCのレースフォーマットは非常に特徴的なものです。1戦あたり2レースが開催され、2010年は年間22レースが開催されます。Race1とRace2では以下のような違いがあります。

Race1 :ローリングスタート
(予選のベストタイム順)

Race2 :スタンディングスタート 
(Race1の着順、1位~8位はリバースグリッド)
スタンディングスタートのRace2。スタート直後のクラッシュはお約束?
【写真提供:WTCC】

リバースグリッドとはRace1の上位8台のグリッドを逆転させてグリッドを組むシステムで、Race1の優勝者はRace2では8番手からの追い上げ、Race1で8位になった選手はRace2ではポールポジションからのスタートになります。これはRace1とは違ったレース展開を演出するとともに、Race1のスタートで失敗したドライバーも8位まで追い上げればRace2で上位からスタートするチャンスを得られるという絶妙なシステムになっています。

また、レース距離が非常に短いのも特徴です。WTCCの1レースのレース距離は僅か50km程度。F1の300kmと比べると遥かに短く、1周の距離が長いコースでは10周以下の超スプリントレースが展開されます。そのため、レースは非常に激しいバトルの連続となるわけですね。

短い時間で完結し、なおかつバトル、クラッシュが頻繁に発生する。こうした特徴的なフォーマットからもWTCCはテレビ放送に非常に適したレースと言えるでしょう。自分の車ではスポーツドライビングを楽しまない「ドライビングゲーム」世代にも訴求力があり、モータースポーツファン層の拡大も期待されています。


次のページでは、今年のWTCCに出場するマシンをご紹介しましょう。
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