ロータスの名前を受け継ぐ男の経営手腕
コーリン・チャップマン率いた「ロータス」はF1でドライバーズチャンピオンに6回、コンストラクターズでは7回のチャンピオンに輝いたものの、82年にチャップマンが没してからは結局一度もチャンピオンを獲得することなく衰退の道を歩んで行った。特に90年代に入ってからは深刻な資金難に悩まされ、94年を最後に「チーム・ロータス」は消滅してしまった。F1チームは消滅したが、「ロータス」のクルマは市販スポーツカーとして存在している。なぜかというと「ロータス」の自動車製造部門の「ロータス・カーズ」が94年にマレーシアの自動車メーカー「プロトン」によって買収され、「プロトン」傘下のメーカーとして新しいスポーツカーの製造、販売を続けているからである。
ロータス11 |
トニー・フェルナンデス 【写真提供:LOTUS Racing】 |
「エア・アジア」は日本に未就航の航空会社であるが、アジア内での国際線ネットワークは凄まじい勢いで拡大しており、アジア各地の空港では頻繁に飛行機を見かける。「エア・アジア」は最近日本でもニュースで度々取り上げられるようになった「LCC(ローコストキャリア)=格安航空会社」のアジア代表とも言える航空会社である。
エアアジアの広告 |
そんなに安くて採算に乗るのか?運行の安全に支障はないのか?日本の利用者なら心配してしまうかもしれないが、「LCC」は高額なリース料を払って借りている飛行機を利用者の多い時間まで空港に駐機させておくよりも、昼間に飛行機を飛ばし、安い料金設定にしてチケットを売り、収入を得る方が良い、という考え方で運行している。もちろん利用者の多い夕刻の便に変更したければ高額なチケットを買いなおさなくてはならず、需要と供給に合わせた細かい価格設定で採算を合わせる手法だ。
今後、経済が急速に発展し、ビジネスマンや観光客を含めた人の往来が活発になるアジア。マレーシアという一国、東南アジアというエリアだけに捉われず、アジア全体をマーケットとして見据える「エア・アジア」は今後もネットワークを広げ、アジア活性化の一端を担うことになるだろう。
しかしながら、トニー・フェルナンデスはただヤミクモにネットワークを広げ、自分の力を示そうとするバブリーな経営者とは一味違う。なかなか日本路線にも進出してこないことからも、それはよく分かる。空港使用料が高いという日本の特殊な事情もあるにせよ、日本路線は間違いなく収益にはプラスになるはずである。しかし、格安航空会社の定期国際線が存在しない日本では勇み足になる可能性もある。フェルナンデスはその辺をよく心得ている敏腕ビジネスマンなのである。
では、「ロータス」をF1チームとして再び復活させようとする、彼の理念はいったいどこにあるのだろう?