バトルの多さは4輪レースの比ではない
コース上で順位が変わらない。4輪レース、とくにF1においては何年もこれが当たり前になってしまっています。そんなバトルの無さにすっかり飽きてしまった4輪レースファンの方はぜひロードレースをご覧になってください。全日本「JSB1000」クラスのトップ争い 【写真提供:MOBILITYLAND】 |
時にはスピードダウンして後ろのライダーを先に行かせたりすることもありますし、ファイナルラップの最後のコーナーで仕掛けることも、サイドバイサイドのままチェッカーフラッグを受けることも頻繁に起こります。ライダーたちの駆け引き、心理戦を読み取れるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、まずは単純にバトルを楽しんでみてください。ロードレースのバトルは見ていて飽きることがありません。
全日本「GP125」クラスのトップ争い。軽量級クラスでは集団を形成して、抜きつ抜かれつのバトルが展開される。 【写真提供:MOBILITYLAND】 |
ライダーたちは本当にフレンドリー!
「MotoGP」の中継映像などを見ていると、スターティンググリッドを撮影するカメラに向かって、投げキッスをしたり、面白い表情を作っておどけてみたり、世界中のファンに向けて手を振るライダーたちの光景をよく見かけます。スタート前は緊張感でいっぱいのはずなのに、ライダーたちはその緊張を自らほぐすかのようにパフォーマンスを行います。4輪レースではあまり見られない光景です。これは国内、海外問わずロードレースのライダー全体に言えることですが、多くのライダーは非常にフレンドリーで、ファンサービスを欠かしません。昨年からF1でも「サイン会」が行われるようになり、ドライバーに出演を義務化したわけですが、実は「MotoGP」では随分前から行われていました。そういった背景もあってか、ロードレースはファンとの距離が4輪レースに比べて非常に近いといえます。
「日本グランプリ」でサイン会に出席したロッシ。 【写真提供:MOBILITYLAND】 |
4輪レースに比べてはるかに高い怪我のリスク
多くの人の2輪レースのイメージとして、「転倒事故」による「シリアスな怪我」のイメージがあると思います。ゴールデンタイムのテレビ番組でも時々、恐ろしい転倒シーンが繰り返し流されることがありますが、事実、ロードレースでは転倒事故が日常茶飯事的に発生します。モノコックフレームなど強固なシェルに覆われた4輪レースのドライバーと違い、ロードレースに出場するライダーの身を守るものはヘルメットとグローブ、ブーツ、そして革のツナギしかありません。スリップして転倒することはもちろん、暴れるマシンを抑えきれずに突然上空に向かって放り出される「ハイサイド」と呼ばれるアクシデントもあり、時に生命の危機にさらされるシリアスなアクシデントも発生します。
転倒シーン |
モータースポーツはよく「命がけのスポーツ」と形容されます。しかし、これは4輪レースも同じですが、世間の大きな誤解です。ハッキリ言って「命をかけている」ライダーは一人も居ません。自分の命が亡くなれば無理をして良い結果を残す意味などありませんしね。
とある派手なライディングを見せるライダーが言っていました、「僕はとても安全な乗り方をしているんですよ。だって自分の命は大切ですからね」そう話すライダーの言葉には一瞬驚きました。しかし、転倒しないギリギリの所までバイクを倒しこんで凄まじいスピードでコーナーを駆け抜けていくという行為の中には、一見ムチャクチャなことをやっているようで、実はただヤミクモにブッ飛ばしているだけではない、ということが彼の言葉からはよく分かります。ライダーたちには乗り方にそれぞれの工夫があって、サジ加減が人によって異なりますから、その辺を少し意識してレースを見てみると、よりライダーの走りに感情移入できるかもしれません。
次のページではロードレースのライダーたちのビックリな事実をさらに掘り下げます。