新型クラウンのカタログを開いたら『ZEROクラウン』と書いてある。コマーシャルも全て同じコンセプト。どんな意味を持つのか? トヨタによれば「このあたりで生まれ変わり、基本に戻って良いクルマ作りをしたい」。もう少し解りやすく説明してみよう。クラウンはユーザーと一緒に年を刻んできた。ユーザーがクラウンの変化を好まなかった、と言い換えても良かろう。クラウンというクルマ、基本的に「アメリカ車を高級とする」コンセプトで作られ、その流れから抜けられなかったため、ヨーロッパ車の味を支持する若い年代から敬遠されたワケ。結果、ユーザー層の平均年齢60歳という「シニア御用達」のクルマになってしまう。
トヨタは一時期「このままクラウンの販売台数が少なくなってもいい。今のユーザーに好まれるクルマのままにしたい」と考えていたようだけれど、やはり最新の技術を投じた良いクルマに乗って欲しいと方向変換したのだろう。確かに黎明期のクラウンって「最新の技術を投入して作られたモデル」だった。それなら最新のクラウンも最新の技術を投入して作るべきだとなったらしい。これ、正しい選択だと思う。前回の東京モーターショーに出展された『クラウンコンセプト』を見て驚いた。本当にトヨタが持つ技術は全て投入されていたから。渋滞時の追尾モードなどセルシオにも採用されていない技術。私も世界最新の技術を投入したモデル、と紹介した。
しかし! 発売された新型クラウンを見ると、残念ながらハイテクの採用は見送られたようだ。渋滞時の追尾モードを探すも装備リストに無し。そればかりか、シーマやインスパイアに採用されたレーンキープサポートや、プリウスの自動バック装置、ミリ波レーダーを使うセルシオのプリクラッシュセーフティ(車間距離を常時検知し追突しそうになると自動ブレーキを掛けてくれるシステム)さえ付いておらず。
う~ん! ハード面を見るとクラウンクラスで初めて電動パワステを採用するなど(レーンキープサポートや自動バック装置は電動パワステじゃないと実現できない)、万全なのだけれど。自動運転アレルギーの国交省が認可しなかったのか?
最先端の電子技術こそトヨタが世界トップの分野。ハイテクを失った新型クラウンは割とコンサバなクルマになってしまった。後輪駆動でトヨタ初のV6エンジンを採用しているが、衝突安全性向上のため(衝突で潰れるスペースを確保するにはエンジンが前後に長い直列6気筒よりV6有利)今や世界的な流れ。デザインを含め「一回り小さいボディに6気筒エンジンを積んだセルシオ」といったイメージ。ただ試乗して凄い仕上がりだったなら、きっと評価は大きく変わるかもしれない。
この部分、1月中旬の試乗で「凄いクルマだ!」となれば書き換えます。個人的にはそう遠くない将来、モーターショーで紹介されたハイテクが搭載されてくると考えている。