同じものでも、太陽の光、空気の透明度、背景となる環境の色の違いによって、色の見え方が変化します。例えば、ロサンゼルスのような、明るい太陽の光の下できれいに見えたワンピースが、日本でもきれいに見えるとはかぎらないのです。反対に、海外のリゾートでは、現地で買った水着の方が美しく感じられることもあります。
今回は、色彩と風土の基本をご紹介します。
太陽の日照率
一般に、太陽がさんさんと降り注ぐ南国の地域では、鮮やかなレッド、オレンジ、イエローが好まれます。反対に、北ヨーロッパのような日照率が高くない地域では、ブルーやグリーンなど寒色系や色みをおさえた彩度の低い色が好まれるようです。太陽光線の照度(明るさ:ルクス)は地球の緯度と密接な関係があり、赤道付近の明るさを100%とすると北ヨーロッパ地域は25%程度だと言われています。明るい太陽光の下では、明るく鮮やかな色に対する反応が敏感になるのに対して、太陽光に恵まれない地域では、鮮やかさをおさえたニュアンスのある色に対する美的感度が高まるのではないかと考えられています。
太陽の光の色温度
太陽の白い光には、赤、オレンジ、黄、緑、青、青紫など、波長が異なる可視光線が含まれています。光の色温度(波長の振幅)も緯度との関係が深く、赤道付近の太陽の光は、赤やオレンジなど長波長の成分を多く含んでいるため、赤みを帯びています。反対に、北ヨーロッパ地域の太陽の光は、青や青紫など短波長の成分を多く含んでいるので、青みを帯びています。
このように、地球の緯度と太陽の光は関係が深く、私たちの色の認識にも大きな影響を与えていると考えられています。
空気の透明度
地球を照らす太陽の光は、空気の層を通過して、地上に降り注ぎます。空気中には、さまざまな塵芥や水蒸気が充満しています。日本のような湿度の高い地域は、大気中に湿気を帯びた微細な粒子を多く含んでいます。このため、太陽の光に微妙な陰影を生み、明るく澄んだ色よりも、少しくすんだグレイッシュな色の方がきれいに見えます。反対に、空気の乾燥した地域では、太陽の光を遮るものがないため、明るく澄んだ色がとても映えます。
太陽の光、空気の透明度は、地域ごとの差異や変化を生み出す要因となり、それぞれ特徴的な風土色や色嗜好が育まれていきます。
環境の色との対比
ヨーロッパでは、日本よりも鮮やかな色の花が好まれるそうです。色鮮やかな花々は、石造りの建造物で構成される重厚な街並みに、彩りを添えるアクセントとなっているようです。そのため、昼夜の気温差を大きくするなどして、花の色が鮮やかになるように栽培しているそうです。このように、どのような色が美しく見えるかは、背景となる環境の色も影響を与えます。さまざまな要因が複合的に絡まりあって決まります。その土地、その時に出会える色を楽しむことも、バカンスの醍醐味ではないでしょうか。皆さんも、旅先で素敵な色を見つけてみませんか?
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