赤ちゃんの鼻、口のあたりをふいてあげましょう
大事なのは温度。部屋を暖かくして、肌で暖めてあげながら救急車を待ちましょう(イラスト/平井さくら) |
自然出産で生まれるとき、赤ちゃんは、初めての呼吸に備え、誕生の直前~直後に鼻、口から肺に入っていた羊水を自分でだらだらと出します。ふいてあげると、それを少し助けてあげられるのです。そうこうするうちに肺へワッと空気が入り、産声が上がります。
まれですが、羊膜(赤ちゃんを包んでいる薄い膜)に包まれたまま生まれる赤ちゃんがいます。その場合は、膜を破いてあげてください。
身体をふき、バスタオルに包んで抱く
赤ちゃんの身体も拭いて、バスタオルに包みしっかり抱いてあげましょう。生まれたての赤ちゃんは体温調節機能が未熟で、しかも羊水で濡れているとすぐに体温が奪われてしまいます。夏場でも、包んであげることを忘れないでください。お母さんはあおむけに寝て、胸に赤ちゃんを乗せる
どんな姿勢で産んだとしても、誕生後は、赤ちゃんを抱き取ったらあおむけに寝てしまいましょう。これには、母体の出血量を抑える意味があります。赤ちゃんは、うつぶせにして(お顔は横向きにして)自分の胸の上に寝かせます。すると吐き残した羊水が出やすくなります。このとき、親子の肌と肌が直接触れ合うようにして抱くといいでしょう。
このままタオルケット、毛布など暖かいものをかけます。これで、母親の体温で赤ちゃんが温まり、十分に暖かい状態です。2人でくるまれてゆっくりと救急車の到着を待ちましょう。これで一安心ですが、医学的にはまだ出血が心配な時期で赤ちゃんも呼吸を始めたばかりですから、救急車で病院に移動するのがいいと思います。
産後の赤ちゃんの位置としては、胎盤が、赤ちゃんより低い位置にあるようにすることもポイントです。胎盤の方が高いと、拍動が止まる最初のほんの数分だけですが、胎盤の中にある血液が赤ちゃんに流れこんでしまいます。すると、赤ちゃんの血液が多くなりすぎてしまうのです。
へその緒は、自分で切ってはいけません
「骨盤高位」の姿勢。陣痛が早く進みすぎたときのスローダウンに多少の効果があります(イラスト/平井さくら) |
へその緒はそのままです。自分で切ってはいけません。これは消毒したもので切らないと切り口から感染を起こすかもしれないからです。必ず専門家にしてもらいましょう。早く切る必要はありません。
「車中出産」を避けたいときは
対処法が何となくイメージできましたか? これと似たものには、車中分娩の不安があると思います。基本的には家にいるときと同じですが、後部座席に座り、楽な姿勢をとるのがよいでしょう。誕生を少しでも先送りできるかもしれない姿勢は「骨盤高位」と呼ばれる姿勢です。四つんばいから頭を床まで下げていき、腰を高くして、産道を急な上り坂にするのです。
産科の閉鎖が進んで、遠距離出産の人がどんどん増えています。入院が間に合わないのでは、という不安は少し現実的なものになっています。このような知識は使うことなくすむのが一番ですが、自分と赤ちゃんのために知っておかなければ、と思うくらいのたくましさは、もう産む人に求められていると思います。
ともかくスピード出産は「超・安産」ですから、まずは落ちついてください。経験者の方に聞くと、「ここで、自分で産むしかない」と覚悟が決まると意外と冷静になれるそうです。「不思議なことに、自分の中から指令が出てそれに従った」と言った人もいるくらいです。
◆監修・井本園江さん(開業助産師/神奈川県藤沢市・井本助産院)
井本さんはかつて湘南鎌倉総合病院の産科で婦長さんをしていらした方。今、一緒に、妊婦さんの素朴な質問にお答えする本を作っている最中で2007年春秋社より出版予定です(編集部注:2006年12月時点の情報です)。